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「弟子にしてくれるって本当ですか師匠!?」
「あぁ、本当だよ」
守衛のダグフリーを含めた昼食会がいつから常態化してたかは知るよしもないが俺はそこに乗り込んでリイナを弟子にしてやると宣言した。
「わーい、やったぁぁあ!!」
「良かったねリイナちゃん」
「はい、ノエルさんのおかげです!」
「そんなぁわたしはなんにもしてないよー」
食事に夢中なダグフリーは別にして女子二人は手を繋ぎ合わせて喜んでた。
人の気も知らないでだ……。
最ッ悪の苦肉の策だがやるしかなかった。
このままじゃリイナとの同居は確定的で家での安らぎを奪われるくらいなら、弟子入りを認めて距離を置く方向にシフトした。
「じゃあ、さっそく師匠の召喚術をアタシにも教え」
「待った。それはまだ先の話だ」
「へ?」
「お前も気づいたから俺に弟子入りしたんだろうが俺の召喚術は少々特殊なんだ。簡単に教えられるもんじゃないし、昨日今日弟子入りしてきた奴にホイホイ教えていい代物じゃないんだよ」
「なるほど……やっぱりそうですよね」
それと俺には考えがある。
ただ情けなく諦めてリイナを弟子にしたわけじゃない。
「明日から本格的に修業をつけてやる。だから今日は帰って明日に備えろ」
そう言って俺はリイナに麻袋を手渡す。
「師匠……これってお金じゃ」
「支度金だ。俺の弟子になるってのに小汚ないままじゃあれだからな。風呂入って身綺麗にしてから来い」
「し、師匠~」
「界人くんっ」
手厚く支援してるように見えるからリイナもノエルもいい顔だ。
だが、この金は実質手切れ金みたいなもの。
明日から始まる俺の作戦に付き合わされるリイナへのせめてもの餞別だ。
「……自分から弟子を辞めるって言わせてやるさ」
名付けて『嫌がらせテキトー修業大作戦』決行だ。