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「一目見て感銘を受けました! 精緻な魔力の織り上げによって実体化された召喚獣は実物と遜色ない出来映え。肌触り、温もり、重厚感、まるで本当に生きてるみたいで……うへへ、たまんないですねぇ~」
ティアに咥えられたまま恍惚とした表情で話すリイナは正直言って気持ち悪い。
咥えてるティアも同意見だったようでパッと口を離して逃げてしまった。
「あ痛っ!?」
リイナが地面に落ちて叫ぶが俺等サイドは全員引き気味で心配なんてしない。
ティアはノエルの後ろに隠れて、黒猫はいつの間にか姿が見えなくなってる。
「朝っぱらから人の家に不法侵入しといて……弟子にしろだっけ?」
「そうです!」
地面と仲良くしてたリイナが飛び上がり機関銃のように喋りだした。
「師匠、アタシを弟子にしてください。元々は家族を追っかけてこんな北の辺境に来ましたがもうあんなろくでなし共どうでもいいんです。きっとアタシがここに導かれたのは師匠と出会うためだった! 今はそう思うんですよ。あんな召喚術、王都でだって見たこと無い。師匠、森の中でアタシを助ける時に何か魔術も使ってましたよね? これだけの召喚術を修めておいておまけに人形を瞬殺出来る程の魔術を扱えるなんておかしいですよ。絶対、脳の容量を越えますから。あれにはどんな秘密があるんでしょう! アタシなりに考察してみたんですがやはり召喚触媒に使ってる絵札に……」
延々と早口で呟き続けるリイナは気持ち悪いを通り越して不気味ですらある。
オタクに特有の好きなものを語るときの早口を悪化させた感じだ。
こっちの反応なんてお構い無しに自分だけ気持ち良く語る感じはヴィンツを想起させられて不快になる。
あの男も似た感じで質問責めにしてきた。
魔術に関わる人間ってのはこういうのしかいないのか?
「あ~もう分かった分かった」
放っておくと夜まで止まらなそうなんで中断させた。
「え、それじゃあ!」
リイナの顔がパッと明るくなった。
そこでハッキリ言ってやる。
「嫌だよ。弟子なんて取らないから帰ってくれ」