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【カード名:|六番街の黒猫】

等級(ランク)初級(ノーマル)

【属性:闇】

【所持スロット:◆◆◇◇◇】

【種族:悪魔】

【戦闘力:1000】

【霧の都の六番街。

 夜の街路を照らす照明の下、黒猫が一匹鎮座する。

 おかしいな。さっきも街路樹の上に似た猫を見た気がする。

 次第に濃くなる霧の先から不安を煽る猫の鳴き声。

 ……一匹じゃない。鳴き声は十重二十重(とえはたえ)に聞こ――】


     【オクシデンツ・スタッド】



 肩の上に乗る黒猫がニャンと可愛らしく一鳴きした。

 人語は喋れないみたいだが俺の言葉は理解してるようで場に変化が起きる。

 どこからか霧が立ち込め始めて足元に滞留した。

「あの人形、怪機素体を倒したいんだ。それと魔獣。他の人間達はダメだからな」

 走りながら肩の上の黒猫に説明しておく。

 黒猫はニャーと答えるが俺にはイエスなのかノーなのかも分からない。

 とりあえずは一番近くの人間を助けるだけだ。

「うわぁぁぁああ!」

 怪機素体に襲われ悲鳴を上げてる男が一人いた。

 魔獣の素材で出来た剣と鎧をしてるから冒険者だろう。

「頼む、あの男を助けたい。力を貸してくれ!」

 黒猫にそう言って、俺も腰から剣を抜く。

 怪機素体の残骸から鍛えられた業物だ。素人でも傷くらいはつけられるはず。

 俺が剣を抜くと同時に黒猫が肩から飛び降りて男の元へと先行する。

 駆けてく黒猫の耳と尻尾が青く発火したかと思うとその姿が揺らいだ。

 周囲の霧と同化するように黒猫の身体は霞のように不確かになる。

 そして、ニャーと黒猫は鳴いた。

 鳴き声のあと不確かだった身体がハッキリと実体に戻る。

 しかし、さっきとは違う点がある。

「二匹に増えた……!」

 一匹だったはずの黒猫が二匹に数を増やした。

 分裂か、増殖か、なんにしろそれが黒猫の持つ特殊な力なのは明らかだ。

 黒猫の増殖は怪機素体と接敵するまで続き倍々に数を増やし八匹にまで増えていた。

 八匹の黒猫が怪機素体に群がり爪と牙を立てて蹂躙していく。

「……グロいな」

 怪機素体が金属で構成されてて良かったと思う。

 もしもこれが動物なら見るも無惨な光景だったに違いない。

「おい、大丈夫か?」

 襲われてた男に声を掛け無事か確認する。

「はい。なんとか……って、カイトさん!?」

「あんたはさっき入口で会った……」

 基地の入口で警備をしていた男だった。

 見たところ怪我はなさそうで命に別状は無さそうに見える。

「助けて頂きありがとうございます! 突然の出来事に不意を突かれ面目次第も…………まさか、こうなることを予期してカイトさんはここに!?」

 早合点されたようだが否定するのも面倒なので何も言わないでおく。

 こんな事態予測なんてしてないっつの。

 一応、一人の人間を助けられはしたがここからが正念場だ。

 魔獣と怪機素体とで潰しあってくれてるから被害は少ないものの、襲われてる人間は他にもいる。

 彼等を黒猫と一緒に救ってくとなると骨が折れる。

 増殖の上限がいったいどれくらいか知らないがまさかこの戦場全体をカバー出来るはずもないし。

 とりあえずはどこから手をつけるか視線を投げる。

 こういう場合は優先順位を決めておかないと後々マズイことになるからな。

 そうして乱戦模様となってる基地内に目を向ける。

 中でも魔獣の大群と怪機素体の軍勢が火花を散らす主戦場は激戦の最中にあり目を引いた。

 最後にはあれを相手取らないといけないのかと気を重くしてると、煌炎が空から降り注ぎ燃やし尽くした。

「あれはカイトさんの!」

 警備の男の声に空を見上げると良く見知った赤い龍の姿があった。

「ティア!?」

 いるはずのないティアの姿に驚くが理由はすぐ知れた。

「ごめんね界人くん!」

 ティアの背中からノエルが顔を覗かせた。

「ティアちゃん、こんなに長く界人くんと離れた事なかったから寂しくなっちゃったみたいで飛んできちゃったんだよ」

 幼稚園児の初めてのお泊まりじゃあるまいにノエルがそんな理由を語った。

 来た理由に呆れるべきか、来たことを褒めるべきかは後回しだ。

「休暇中だけど、やれるかティア?」

 今は現状の打破こそ最優先。ティアがいるならそれも容易い。

 俺の言葉にティアは嬉しそうに咆哮してくれてる。やる気は満々みたいだ。

「そうだ、あんた」

「はい、なんでしょうか?」

「これ、よかったら受け取ってくれ。相棒も来てくれたから俺には不要なんだ。結構重いし、結局使わなかったからさ」

 腰に吊るしてた剣を警備の男に手渡した。

「な、こんな高価な品を!?」

 正直言うと、これからティアに乗るのに邪魔なんだよな。

 警備の男も口では申し訳なさそうにしてるけど満更でもない顔だ。

「界人くん乗ってッ」 

「あぁ」

 警備の男は返そうとしてたが俺は高度を下げたティアの背に乗り飛び去る。

 悪い品じゃないし冒険者なら俺以上に役立てくれるはずだ。

「さぁ、やるぞティア」

 乗り馴れた堅い背中と頬を撫でる風。

 基地内には多くの敵がまだ残っていたが負ける気がしない。

「行くぞ!」

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