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 山裾に建造された基地はなかなか立派なもので小屋が幾つか建ち並ぶ居住区、山から切り出した木材を置いておく資材置場とエリア分けし整理されていた。

 粗野な傭兵と冒険者を寄せ集めた間に合わせの拠点にしては綺麗であり界人は感心する。

 この基地の役目は山から降りて来る怪機素体と魔獣への対処、そして入山者の規制にあった。

 第二位冒険者の活躍により前者は問題なかったが、後者には手を焼いているのが現状だ。

 不当な理由での入山者は近頃増える一方で警備の手間を省こうと、基地自体を山裾に沿い延伸させようという計画が進行中なのであった。

 その影響で街道から続く入口に立っていたさっきの男以外に基地内に人の姿は見当たらず気配もしない。

 手分けして拡張作業に従事したり、本来の任務である山の見回りをしてたりと方方(ほうぼう)で忙しくしていた。

「お前も物好きだな。まさか、再びここに来るとは思わなかった」

 人がいないのをいいことにリートが呆れた声を漏らした。

 すっかり様変わりしてしまったが現在地は一月と少し前に界人とリートが訪れた場所であった。

 その際は徒歩で来たから苦労したなと界人は思い出す。

 リートの牽く荷車に乗ってれば半日掛からず到着でき、ティアに乗れば一時間と掛からない道のりだ。

「……ここがいい気がしたんだ」

 ここがいい、そう口にした界人だったが視線はずっと下を向いていた。

 決してその視線が上向くことはなかった。

 具体的には山頂の方を見ようとしないのだ。

 荷台の木目を虚無的に見つめるばかりなのである。

 口にする言葉とは裏腹にちぐはぐな行動をとる界人にリートは冷たく突き放すように言った。

「人間とは難儀だな。覚悟だの、踏ん切りだのと理由付けしてあっちだこっちだとフラフラ、フラフラ……我にしてみればいい迷惑だ」

 反論しようにも語られる言葉は事実を列挙したものだけに粛々と受け入れるしかなかった。

 そこで界人はようやく気づく。

「――リート、お前なんで喋って!?」

 界人は反射的に伏せていた顔を上げる。

 喋るトナカイの存在をリイナに目撃されてしまったと焦ったのだ。

 しかし、その心配は杞憂に終わる。

 荷台にリイナの姿は既に無かったのだ。

「喋る時は常に気を払っている。気づかなかったのか? あの娘ならとっくに抜け出したぞ」

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