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「――元から喋れるわけではない。お前のせいだ」

「俺のせい?」

 渋い声で人語を喋るトナカイ、この異世界に来てからも遭遇しなかった異常な出来事に最初は驚愕した俺だったがすぐに落ち着いた。

 よくよく考えれば児童向けのアニメや絵本だと普通な事だ。

 突然話しかけられてビックリしたってのが先行して戸惑ってしまったものの簡単に順応できた。

 気持ち悪いとも怖いとも感じないんだから普通に話せる。

 そして、なんで今まで話さなかったんだと尋ねたところ意外な答えが返ってきたんだ。

「なんで俺のせいなんだよ?」

「お前が主におかしな杖を渡しただろう。あれを主が受け取った日から我もおかしくなったのだ。いままで理解できなかった主の言葉が徐々に明瞭に聞き取れるようになり、気づけば主と同じ言葉を喋れるようになっていたのだ」

 ……一人称、我なんだな。渋い声にはお似合いだ。

 それよりおかしな杖って、

「【マジカルステッキ/☆ラブリー☆】の事だよな?」

 あの恥ずかしい杖の副次効果でそんなことになってたとは知らなかった。

 シンジが召喚した【夜を駆る悪夢の車輪(ミッドナイトホイール)】もそうだったがこの世界に召喚されたモノはディテールが凝ってる。

【夜を駆る悪夢の車輪】が自動二輪車と変わらず運転出来たように【マジカルステッキ/☆ラブリー☆】にも隠れた仕様があったんだろうな。

 それでリートが喋れるようになったと考えるのが自然だ。

「……考えられるのは魔法少女だからとか?」

【マジカルステッキ/☆ラブリー☆】は魔法少女をモデルにしたカードテーマでそれに類するカードが多数存在する。

 残念ながらそれらカードを俺は所有していない。

 そのテーマに属するカード群はどれも可愛らしい美少女ばかりで高値で取引されてる。

 可愛い女の子のカードばかり高騰するバトミリの妙で、俺と一緒に転移してきた格安ストレージには入ってないんだ。

 でも、原因の予測は出来る。

「ほら、魔法少女って動物のマスコットキャラが定番の相棒だろ? だから、それに相当するのがリートって杖に判断されて喋れるようになったとか」

「お前の世界の決まりごとを我に言われても困る。そんな決まりごとは知らん」

 俺の予測は冷たくリートに一蹴されたのであった。

「……喋れるようになったのを責めてるのではない。これはこれで便利だからな。ただな」

「ただ?」

「この事は主には黙っていてくれ」

「それはどうして?」

「……いろいろとあるのだ」

 ノエルの事だからリートが喋れるようになったと知ればかなり喜ぶはずだ。

 しかし、リートは口を閉ざすばかりで黙ってて欲しい理由を語ろうとはしなかった。

 本人がその態度なのに俺がこれ以上追及するのは失礼だろう。

「わかったよ。言わない」

 リートの気持ちを尊重し黙っておく事にした。

「恩に着る。主にバレては面倒だからな」

「そうだな。きっと嬉しいからってティアにするみたいにベタベタ絡んでいきそうだ」

「違いないな。主の良いところであり悪癖でもある」

「ノエルって昔からあんな感じなのか?」

「主の幼き頃か、確かにそういった節はあったがどちらかといえば……」

 俺とリートは目的地に到着するまで話しを続けた。

 大概はノエルの話題で本人が聞かれたくないだろう秘密までリートは喋っていた。

 そんな事を聞かされたらリートが喋れる事実を余計喋りづらくなる。

 ノエルに秘密を知ったのがバレたら怖いからな。

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