第弌話 始まり
緑の生い茂る森の中
少女は一人、本を見ていた。
(もう少し…もう少し先にあれがある……!)
少女が本を閉じた瞬間、本は燃えるようにして消えた。いや、消えたのでは無い。無くなったのだ。最初からそこには何もなかったかのように……
しかし、驚くべきはそこではない。驚くべきところは、それをみた少女の表情だ。
まるでそれが当たり前のように見ている。
「ふう…………。」
そう言いながら一歩進んだその時
グルァァァァァァァァァァ!!
獣の鳴き声のようなものが聞こえてきた。
(見つかった!)
人と獣…その二つを合わせたような姿をしたいわゆる『化け物』が数匹、そこにいた。
『『『グオオオオオオオオオオ!!!』』』
鳴き声が聞こえたその刹那、少女の細身な体に『それ』が襲いかかった。
「…やるしかない……か…」
はぁ。と少女はため息をつき、腰にさしている刀―――『蒼燕刀』(そうえんとう)に手をかけた。
「霧雨…」
突く、突く、突く突く突く突く突く突く突く突く突く突く!
阿鼻叫喚の中、『それ』の血しぶきが飛び散る。しかし、少女の端整な顔や服には返り血が付かなかった。
何ともすごい剣技!!
『グギャアアアアアアアアアアア!!』
一匹、又一匹と、倒れていく『それ』…
そして最後の一匹。
『グオオオオオオオオオオオオオ!』
少女は身を翻し、蒼燕刀をつかに戻した。
『それ』の残骸には目もくれず、少女は又歩き出した。
―数分後―
「あった……!!これが…『神樹』……!」
少女が神樹に手を触れた。
すると、その体は明緑色に光り、姿はかき消えるように消えてしまった。
少女の姿が消えたとき、明緑色の光は消え、代わりに、一筋の風が吹いた。