第97話 精霊の力
ヴィムの目には魔獣の大群が映る。
「ヴィムさん、どうしますか?」
「ハナとミサにはちょっと手に負えないかもしれないな……」
ヴィムは見たままを伝えた。
魔獣の中には空を飛んでいるものも居る。
遠距離攻撃が得意ではない、彼女たちには圧倒的に武が悪いだろう。
「そんな……」
「また、私たちはお役に立てないんですか……」
二人が目を伏せる。
「いや、まだ手はある。策を伝えるぞ」
「「はい!!」」
「まず、こここで魔獣を迎え撃つ」
ここは後ろは森であり、前方は荒野が広がっているという地形になっている。
いくら魔法をぶっ放しても被害は最小限に抑えられるだろう。
「ディアナ、空を飛んでいる魔獣の一掃を頼めるか?」
「任せておけ。マスター」
ディアナが唯一、遠距離攻撃ができる。
ヴィムが地上の敵に集中するためにも空の敵は任せておきたかった。
「ありがとう。俺は、地上の敵を一掃しにかかる。この数の魔獣だから、統率している者がいるはずだ。そいつを叩く間、俺の背中を二人に任せる。頼めるか?」
「もちろんです」
「任せてください」
二人ともすぐに頷いてくれる。
「よし、やりますか!」
索敵魔法には徐々に魔獣の大群が押し寄せてくるのが感じる。
この感じは久しぶりだ。
歴戦の猛者たちは大慌てするような危機は滅多に生じないという。
ヴィムもどこかで落ち着いている自分がいるのを感じていた。
「来たな……」
肉眼でも見える位置に魔獣が来た事を確認する。
「空は我にお任せを」
「ああ、頼んだ」
《雷槍》
ディアナがそう呟いた瞬間に、無数の雷を纏った光の槍が展開された。
「行け!」
その声で槍が空に飛んで行く。
魔獣にぶっ刺さり、次々に空飛ぶ魔獣が地面に叩き落とされる。
「流石だな」
「マスターほどではない。所詮、扱えるのは光の系統だけだからな」
「十分すごいさ。俺も負けてられないな」
《テンペスト》
稲妻をまとった風が地上の魔獣を薙ぎ払って行く。
これでもまだ、魔獣は三割程度しか倒していない。
「どこだ、どこにいる……」
ヴィムは魔獣の大群の中から統率する者を探し出す。
「見つけた……」
「え、どこですか?」
「魔獣の中心にいる魔族がこの群れの統率を取っていると思う」
問題はそこまでどうやって行くかだ。
このままでは魔人の群れをかき分けていかねばならない。
「マスターあれを使え」
「あれって?」
「グラフィックゲートだよ」
ディアナが右の口角を上げて言った。
「なるほどな。でも、あれを使ってこの前ぶっ倒れたんだけど……」
「今のマスターには私の力が宿っている。代償はいらないはずだ」
「そんなことも出来るのかよ」
「精霊王だからな」
ドヤ顔を浮かべて胸を張るディアナ。
再び空に視線を戻すと、今度は無数の光の矢をぶっ放している所だった。
「じゃあ、遠慮なく使わせて貰うぜ」
『光の精霊王と契約し者が願い奉る。我にその精霊の加護を授けよ』
《グラフィックゲート》