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第95話 緊急の呼び出し

 一週間ほどは平和な日常が続いていた。


「旦那様、王宮よりお呼び出しがございました。早急に王宮へ来てほしいそうです」

「分かった。今から行こうか」


 時刻は昼過ぎ、陛下が緊急で呼び出すのは珍しい。

逆を言えば、それだけ切羽詰まった状況下にあるということだろう。


「かしこまりました。王宮の方には私から伝えておきます。お気をつけて行ってらっしゃいませ」


 ジェームズに見送られてヴィムたちは屋敷を出る。


「マスター、お出かけか?」

「うん、王宮にね」

「なら、我も同行しよう」

「目立たないでよ」


 ただでさえ、女の子を複数人連れて歩いていると、周りの視線が刺さるのだ。

ギルドではかなり浮いている方だと思う。


「承知した」


 ヴィムのすぐ隣をディアナは歩く。

通り過ぎる通行人は皆、その美しさに目を奪われている。

本人は見られていることはあまり気にしていないらしい。


 そのまま数分歩くと王宮に到着する。


「お疲れ様です」


 いつものように顔パスで中に通される。

新しい顔がいたので一瞬怪訝な顔をしたが、ヴィムの連れている人間なら問題ないと判断したのだろう。


「お待ちしておりました。おや、今日は見慣れない方がいらっしゃるのですね」


 いつもヴィムたちのこと案内してくれている従者がディアナの顔を見て言った。


「まあ、新しい仲間って所だ」

「左様でございましたか。こちらへどうぞ」


 応接間に通されてソファーに腰を下ろす。

そこでしばらく待っていると、再び応接間の扉が開いた。


「待たせてしまったな。今回も急にすまん」


 立ちあがろうとするヴィムたちを陛下が手で制止して、対面のソファーに座った。


「そちらのお嬢さんは? 初めてみるのだが」


 陛下が当然ながらディアナの方に視線を向けて言った。


「彼女はディアナと言って僕の契約精霊です」

「ちょ、ちょっと待て。今、ディアナと言ったか?」

「はい、ご存じなんですか? 彼女は光の精霊王です」


 ヴィムの言葉にディアナはニコッと笑う。

対象に陛下は紅茶の入ったカップを持つ手が震えている。


「私は、ヴィムなら何をやっても驚かないと思っていたが、私が愚かだったようだ」

「そうですか? ハナたちは受け入れてくれましたよ」

「私にはまだその耐性はないみたいだ。まさか、精霊王と契約できるほどの器を持っているとはな……」


 陛下がゆっくりと紅茶を口に運ぶ。


「それで、今日はどんな御用件で?」

「ああ、そうだった。驚きすぎて忘れる所だった」


 陛下はカップを置くと話始めた。


「実は西の国境付近に魔獣の大群が向かっているという情報が入った」

「数は?」

「一万だ」


 陛下の言葉に皆、驚きの表情を浮かべた。


「ヴィムたちにそれを一掃して来てほしい。今動けるのは君たちしか居ないのだ」

「というと?」

「上級冒険者は南部に出現したワイバーンの討伐、第一から第三騎士団と魔道士団は東の国境の防衛に行っている」

「王都にもある程度の戦力は残しておきたいと」

「その通りだ」


 王都には重要な国務機関がたくさんある。

これ以上、騎士団や魔道士団を派遣すると、王都の戦力が激減してしまう。


「なんか、あまりにもタイミングが良すぎる気がしますね」

「ヴィムもそう思うか」

「ええ」


 こちらの戦力が分散している今を狙ってきたようなタイミングである。


「まあ、分かりました。蹴散らして来ます」

「よろしく頼む。もし、どこかの国の手引きだとしたらそれも調べられたりするか?」

「やれる所までやってみます」

「心配するだけ無駄かもしれんが、今回は気をつけてくれよ」

「ありがとうございます」


 ヴィムたちは王宮を後にすると、一旦屋敷に戻ることにした。

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