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第9話 皇帝の苦悩と一縷の望み

 ヴィムが幽閉された迷宮から脱出したことはすぐに伝わった。

やはり、宮廷魔術師長がその異変にいち早く気づいた。


「皇帝、ご報告がございます」


 魔術師長の報告を聞いた公爵は皇帝に謁見を申し込んでいた。


「なんだ?」

「ヴィム・アーベルが迷宮から脱出したようです」


 ヴィムが帝国を去ってからというもの、魔法技術が衰退の一途を辿っていた。

ヴィムに憧れて魔術師を志した若者は育たなくなり、新しい魔法の研究も疎かになっていた。


 そのことで、ただでさえ頭を悩ましていた皇帝にとって、この報告は耳を塞ぎたくなるものだっただろう。


「何!? それは確かな情報なんだろうな」

「はい、今朝早くに結界が破壊されるのを感じた魔術師長が部下に様子を見に行かせた所、迷宮の出口が魔法により破壊されていたそうです」

「恐ろしいことになったな……」


 元はヴィムの力を恐れて幽閉したのだ。

それが1年で結界も破られて脱出を許すとは思っていなかった。


 元々、魔術に関して桁外れなやつだったが、守りでは右に出る者はいないと言われる魔術師長の結界さえも破ってしまうとは、予想外だった。


「脱出後の行き先は分かっているのか?」

「いえ、分かっておりません」


 公爵はヴィムがどこに向かったかの大体の検討はついていた。

しかし、まだこのタイミングで言うべきではないと思って口を閉ざした。


「すぐに調べさせろ! あいつは野放しに出来ん!」

「分かりました。そのように」


 そう言うと、公爵は皇帝との謁見を終えた。


「いっそ、消してしまうか」


 誰もいない部屋で皇帝はつぶやいた。

果たして、ヴィムを消せるほどの逸材が帝国に居るのだろうか。



 ♢



 皇帝への報告を終えて、公爵は自分の執務室へと戻ってきた。


「やっと動き出したかヴィムよ。この一年、待ち侘びていたぞ」


 公爵は一人、静かに微笑みを浮かべた。


「ヴィムのことだからきっと行き先はレオリア王国だろうな」


 公爵はヴィムが幽閉された迷宮付近の地図を広げて言った。


「レオリアは実力主義国家、あいつの力が正当に評価されるだろう。おい、ヴィムの居場所を探ってくれ」


 1番信頼のおける部下に公爵が指示した。


「結果は皇帝より先に私に教えてくれ」

「かしこまりました」


 調査結果は3日もあれば分かるだろう。


「ヴィム、お前ならこの腐った世界を叩き直してくれると信じているぞ」


 公爵は誰もいなくなった部屋で天井に向かって言った。

ヴィムがいなくなってからの帝国はまさに地獄だった。


 繰り返される増税に、完全なる身分差別。

公爵はどこかヴィムが復活すること期待していた。


 ヴィム・アーベル、あそこまで誰かのために本気になれる男を公爵は他に知らなかった。

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