第6話 最強は更なる力を手にする
ヴィムは風魔法を黒竜の羽に向かって放つ。
見事に命中した魔法は黒竜の片方の羽を切り落とした。
「これでもう、飛べなくなったな」
ヴィムはニヤリと黒い笑みを浮かべた。
流石の黒竜も片方の羽が無くなった時点で空は飛べなくなってしまう。
そのまま、地上に落下してきた。
しかし、それは致命傷にはならないようである。
『グォォォ!!!!』
大きく咆哮を上げるのと同時にブレスを吐いた。
青白いブレスは周囲を炎の渦に包む。
ヴィムは跳躍してそのブレスを回避した。
あれに当たったら怪我では済まなくなる。
『空気防壁展開』
ヴィムは空気防壁を作り、熱風の被害を抑える。
「凍れ」
そういうと、黒竜の足元に水色の魔法陣が4つほど現れた。
ヴィムは大抵の魔法は無詠唱で撃つことができる。
魔法というのは要はイメージだ。
魔法効果のイメージを具体的にすることによって、詠唱は省略することができる。
まあ、『凍れ』などまで省ける魔術師はそうはいないと思う。
帝国にも数人いるだけであった。
宮廷魔術師さえも、詠唱の省略は難しいと言われていた。
黒竜の足元に現れた魔法陣は、みるみるうちにそこから冷気が立ち上ったと思ったら、黒竜は胸の位置ぐらいまで氷漬けにされていた。
「どうだ? 氷漬けにされる気分は」
ヴィムは黒いほほ笑みを浮かべて言った。
「さて、そろそろお遊びは終わりにしようか」
『シャイニングスピア』
ヴィムは大きな光の槍を魔法で展開する。
直径は数メートルあり、長さはその倍以上ある。
「さよなら」
そう言うと同時に光の槍が黒龍の頭から胴体に突き刺さった。
『グォォォ!!!!』
黒竜は少し情けない咆哮を上げる。
それが聞こえたと思ったら、次の瞬間には光の槍に焼かれて跡形も無く消滅していた。
「終わったか……意外とあっさりしていたな」
正直、もう少し歯応えがあると思っていたので拍子抜けした。
竜の中でも上位種である黒竜も所詮はヴィムの相手ではなかったということだろう。
「攻略できちゃったよ」
最深部の迷宮の守護者を倒したということは迷宮を攻略したという扱いになるのだ。
まだ誰も攻略していないS級指定の迷宮を踏破した。
『力が欲しいか?』
槍が刺さった後をなんとなく眺めていると、どこからともなく綺麗な女性の声が聞こえてきた。
「誰だ?」
ヴィムは誰もいない迷宮の最深部で叫んだ。
『力が欲しいか?』
再び同じ声が聞こえてきた。
「欲しい」
ヴィムはしっかりとはっきりした声で言った。
貰えるものはもらっておくに限る。
どんな力かはまだよくわかっていないが、この窮地を脱するには力が必要だった。
『よく言った。では、其方にこの力を授けよう』
ヴィムの体は優しい光に包まれた。
そして、その声は消失した。
ヴィムの脳内にはある四文字の言葉が浮かんだ。
その言葉は……
『不老不死』
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