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第37話 しばしの別れ

 数分後、受付嬢が戻ってきた。


「ギルマスがお会いになるそうです。ご案内いたします」


 その受付嬢について行き、ギルド支部長室へと到着した。


「お疲れ様でした。随分早いお戻りですね。事前調査か何かでしたか?」


 支部長は立ち上がると、ソファーに座るように促しながら言った。


「いえ、東の森のマナ濃度を上げていた元凶を討伐してきました」

「え!?」


 驚いたような顔を支部長は浮かべていた。

それもそのはずだろう、ヴィムたちが出発してからまだ4時間も経っていないのだ。

通常ならあり得ないスピード感である。


「ご説明させていただきます」


 ヴィムとハナは支部長の対面のソファーに腰を下ろした。


「まず、東の森は高濃度のマナが充満している状況でした。これが、高ランクの魔獣ばかりが発生する原因だったと思われます」


 マナ濃度が上がる原因は色々あるが、1番分かりやすいのが今回のような一体の大型魔獣の影響と言うものである。

よって、その魔獣を討伐すればマナ濃度が下がっていくという寸法だ。


「原因となっていた魔獣と騎士団が対峙していたので、加勢しました。焼き払ってきたので、今は東の森のマナ濃度は下がっています。マナ濃度が濃い時に発生した魔獣もあらかた始末しておきました」


 マナ濃度が濃い時に発生した魔獣はマナ濃度が下がっても、魔獣の強さは変わらないのである。

なので、そっちの始末も必要だった。


「この短時間でそこまでのことをやってのけるとは……」


 支部長は唖然とした表情を浮かべている。


「これが、調査及び討伐完了の報告書です。ここにサインをお願いできますか?」

「わ、分かりました!」


 机の上からペンをとると、支部長はサラサラとサインを入れてくれた。


「ありがとうございます」


 これが、東の森の問題を解決した証拠となる。

ギルド支部長のサインはそれだけの重みがあるのだ。


「もし、また何か問題があるようでしたら王都のギルド本部に私宛に連絡をください。すぐに行けるように調整しますので」

「助かります。本当に」


 ギルド本部に届いた荷物や書簡はギルドで確認の上、ヴィムの自宅の屋敷に転送されるようになっている。


「いえ、これも仕事ですので、お気になさらず。私たちはこれで王都に帰ろうと思っています」

「分かりました。お気をつけてお帰りください」

「ありがとうございます」


 そう言うと、ヴィムたちは支部長室を後にした。


「ディオン伯爵に挨拶はしておかないとな」


 ギルドの建物を出ると、ディオン伯爵の屋敷へと向かう。

伯爵の屋敷に到着すると、中に通される。

ディオン伯爵はリビングで寛いでいた。


「伯爵、私たちはこれで王都に帰ろうと思います」

「そうか。寂しくなるが、気をつけて帰るんじゃよ。またいつでも来るといい。ご馳走を用意して待っているからな」


 伯爵は優しい微笑みを浮かべて言った。


「ありがとうございます」

「そうじゃった。これ、お土産に持っていきなさい」


 伯爵は紙袋を渡してくれた。


「これは?」

「美味しい紅茶の茶葉が入っている。ヴィムが好きだと聞いたもんでな」

「嬉しいです」


 確かに、ヴィムは最近紅茶にハマっている。

帝国にいた頃はあんまり飲む機会がなかったものだ。


 紅茶は貴族の飲み物という印象が帝国には根強く残っていた。

しかし、レオリアでは一般市民でも紅茶を飲む人は多い。


「ありがたく頂いて帰ります」

「うむ。無駄な心配かもしれんが、気をつけてな」

「はい。では、また近いうちにお邪魔します」

「楽しみにしているよ」


 伯爵様に挨拶を済ませると、きた時と同様に馬車に揺られて王都へと出発する。

御者も同様にロルフが務めるので安心だろう。


 ここから、また半日ほどかけてレオリア王都へ向かう。

おそらく、暗くなる前には王都に到着できるのではないかと考えている。


「お二人ともお疲れさまでございました。ゆっくりしていてください。このあたりはまだ危険が少ないですから」


 御者台の方からロルフの声が飛んできた。


「ありがとう」


 ヴィムたちはロルフの言葉に甘えて、意識をボーッとさせていた。

確かに、この辺りは危険は少ないエリアだし、ロルフには遠回りしてもいいから安全なルートで頼むと伝えてあった。

帰りは何事もないといいのだが。


 しかし、そんなヴィムの淡い期待は打ち砕かられるのが、この世界の定石というものである。


「ヴィム様、何か変じゃありませんか?」


 ハナがヴィムに向かって言った。


「ハナも気づいたか。確かにおかしいかもな」


 先ほどから誰ともすれ違わないし、魔獣はいないとしても鳥や動物、虫たちの音が聞こえない。

そう、静か過ぎるのである。


 ヴィムは目をつぶって集中する。


「これは……」

「どうかされましたか?」


 この感じ、ヴィムは一度だけ経験したことがあった。

ヴィムの感覚が正しいとしたらこの感じは……


「人払いの結界」


 人払いの結界とはその名の通り、人の侵入を阻害するものである。

これは、ヴィムがよく使う攻撃を遮断する結界とは違う。

攻撃を跳ね返す事を目的としているのではなく、人の侵入を防ぐという目的があるのだ。


 その時、ヴィムたちの馬車が急停止した。

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