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第110話 獣人の街

 黒竜はゆっくり地面にへと着地する。


『主人、お疲れさまです』

「うん、ありがとう」


 黒竜は姿勢を低くしてくれる。

ヴィムは、黒竜の背中から飛び降りる。


 ハナ、ミサ、ディアナの順番でそれぞれ地面に着地していた。


「ありがとう、黒竜ちゃん」


 ハナは黒竜のを撫でる。

黒竜がヴィム以外にここまで許すのは珍しい。


「世話になったな黒竜よ」

『気にするな。主人の為だ』


 ディアナは黒竜と意思疎通することができるようだが、ハナとミサは黒竜の言葉は分からないだろう。


「ここは、元は街があったみたいだな」


 建物は所々焼け落ちており、今は誰も住んで居ないようである。


「ここは……」


 ハナが絶望を目の当たりにする。


「大丈夫か?」

「すみません。でも、ここは私の暮らしていた街です」

「間違いないのか?」

「はい、だいぶ様子は変わってしまっていますが、間違いないです」

「そうか……」


 この惨状を見たら、そりゃ落ち込むことだろう。

以前の様子とはまるで違っているのだろう。


「なんとかして、ここも復興させてやりたいけどな」


 今のヴィムにはそんな力は無いのは分かっていた。


「ありがとうございます。でも、これを見て覚悟が決まりました。私、やっぱり許せません」


 今までに無いくらい、ハナははっきりと言った。

きっと、自分の中で、迷いや葛藤があったのだろう。

その迷いが今は完全に消えている目をしている。


「そうだな。俺も許せないよ」


 ヴィムは聞こえるか聞こえないか分からないくらいの声で呟く。

その様子を見て、ハナとミサは小さく肩を震わせた。


 初めて“怖い“と思った。

今ままで、悪と対峙するヴィムを何度も見てきた。

しかし、怖いと思ったのはこれが初めてだ。


 ヴィムの奥底に眠る、本当の感情を垣間見た気がする。

それが、シンプルにハナを思っての感情なのか、個人的な感情なのかは分からない。

でも、後者なのでは無いだろうか。


「私、もう少し街の中の様子を見てきてもいいですか?」

「ああ、いいよ。一緒に行こう」


 街は中に入ってもその様子は変わることは無い。

中心にいくにつれて酷くなっているようにも感じる。


「酷いな……」

「はい……」


 戦闘したであろう痕跡も見られるが、かなり一方的にやられたのだろう。


 一通り、街を見たころには少し日が傾きつつあった。


「今日は、そろそろ帰ろう」

「分かりました」


 黒竜が居る所まで戻ると、再び黒竜の背中に乗る。


「帰りもよろしく頼むぞ」

『かしこまりました』


 黒竜での空の旅は来た時同様、半日ほどで王都に到着した。

口数は行きよりは少ない。


 そして、ヴィムは次の一手を考えるのであった。

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