第十六話 怒れる竜皇 その七
殺気立つ竜達を、竜皇は片手を上げて制する。
『待て。大義ない。我が娘と我が弟、そして先日訪れた人間の騎士だ』
『何と! 皇女様が!』
『皇弟殿下もお戻りになられたのですか!』
『人間の姿とはまた……、いえ、ご無事であったなら結構ですな!』
『おめでとうございます!』
『これで竜皇陛下のお悩みも晴れましたな!』
『うむ……』
悩みの晴れていない声。
師匠との話で、人間が関わる価値がないとは言えない、程度の認識にはなっただろうけど、ルビナが私に心酔し、人の姿に変身した事については納得がいっていないだろう。
『兄上、どうしても納得できないと言うのであれば、我が弟子の記憶を読んではいかがかな?』
師匠!?
『成程な。それなら我が娘の囚われた状況も分かると言うものだ』
ちょっと待って私の承諾なしに話を進めないで!
記憶を読むって読心魔法で!?
私がルビナを拉致してないと証明するためには必要かも知れないけど、それ以外に罪が増えませんかね!
『近衛兵の諸君にも是非見てもらいたい。人間と言うものがどういう生き物なのかを、ね』
え、皆で見るの!? 複数で見れるの!? ちょ、ちょっと待って、じゃあルビナは別にしておいてもらえませんか?
『ではディアン殿、こちらに』
『……はい……』
足がもつれなかったのは奇跡だと思う。
竜皇の前に立つと、その大きな手が頭に乗せられた。
師匠、ルビナ、近衛兵と呼ばれた竜達が私を囲む。あ、死んだなこれ。
『我が娘と出会ったのは何日前だ』
『……七日、前です……』
『ふむ、日が中天に達するまでには終わるな』
そう言うと竜皇は詠唱を始めた。
視界が暗くなり、記憶が、勢いよく、呼び覚まされていく!
さぁ第一話から一気読みして、れっつ追体験。
第十六話終了となります。
読了ありがとうございます。
次話から第十七話「小心者の戦い」になります。
今後ともよろしくお願いいたします。