第十六話 怒れる竜皇 その六
竜皇と師匠の意見の対立は続く。
『弱きものを絶対的な立場から弄ぶ、それが誇りあるもののする事か』
『弄ぶのではなく導いているのですよ』
『導く事など出来はしない。人が竜の理を理解できないように、竜もまた人の理など理解できないのだからな』
『それは人間と関わりを持とうとしないからですよ。丁寧に関われば理解できるのです。人も竜も』
こっちに片目つぶらないで師匠!
ルビナとの事を指してるんだろうけど、そんなに理解できている訳でもないし、竜皇がまたこっち向いたらどうするんですか!
『下等な人間と関わったからこそ、そのような傲慢な考えに至ったのだ。それは堕落と何が違う。故に竜族は掟で他の種族との関わりを禁じたのだ』
『私が竜の誇りを失ったように見えますか? 逆に言えば、人間と関わった程度で堕落する竜族の誇りとは、いかがなものでしょうかね』
『うぅむ……』
竜皇の言葉の勢いが明らかに落ちている。
『弱いから学ぶ物は何も無い、下等だから得られる物は何も無い、その考えこそ傲慢と呼ぶべきものです。幼な子の言葉に真理が混じる様に、侮りを捨てて真摯に関わりを持てば、新たな気付きはあるものですよ』
『ふむ……』
竜皇と師匠の討論は、実際の人間と関わっている分師匠の方に分がある。
だけどこのまま師匠が押し切ったら、人間は竜族の玩具になってしまうのではないだろうか。
絶対の力と森羅万象の知恵を持った竜が、あちこちで師匠のように人間をいじり倒すようになったら、人の世の中は良くなるのだろうか、悪くなるのだろうか。
『竜皇様! 何やら大きな声が聞こえましたが!』
『む! 何者だ貴様ら! 人間如きが竜皇様の玉座に断りもなく入りおって!』
うわぁ! 衛兵であろう竜が五、いや六体! やばい! 恐い!
討論会は終了。
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