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第十六話 怒れる竜皇 その一

前話までのあらすじ。

竜の娘との一夜を過ごした小心者の騎士ディアン。酒の勢いで隠し事をいくつか暴露してしまい、結果竜の娘の無意識の誘惑が更に強まる事になったが、睡眠と引き換えに辛くもそれを退けた。しかしこの後竜皇国での引き渡しが待ち受ける。小心騎士は五体満足で帰る事が出来るのだろうか?


それでは第十六話「怒れる竜皇」お楽しみください。

「王国騎士のディアン・オブシだ。王国相談役のシルルバ・ギーン殿にお会いしたい」

「ようこそお越しくださいました! お話は承っております! さ! こちらへどうぞ!」


 詰所で名乗るなり、凄い勢いで受付の担当者に案内される。

 ……非常事態に対応するのが仕事である騎士が歓迎される場面と言うのは、大抵ろくでもない状況と相場は決まっているのだが。


「失礼します! ディアン・オブシ殿とルビナ・パイロープ様をお連れしました!」

「すぐに入っていただけ!」


 立派な扉の奥から聞こえる悲痛な声は、昨日の騎士団長のものだった。あぁ状況の予想がついちゃった。


「失礼します」

「よく来てくださいました!」

「おや、おはよう我が弟子、早かったねぇ」


 扉が開くなり飛び出して来て私の手を取る団長。

 縋るような姿と、後ろに見える師匠のご機嫌な様子に大体の事情は察した。

 でもはるかに年上の男性に手を握られて喜ぶ趣味はない。離してお願い。


「もう少しゆっくりでも良かったのだがね」


 手に持った瓶を器に空け、飲み干す師匠。今の今まで飲んでいたのか。

 ……あれ? 師匠の持ってる瓶、見た事がある。

 確かあれ一本で屋敷が一つ建つんじゃなかったっけ?

 ……見間違えだと信じたい。


「おはよう、我が姪」

「おはようございます。叔父様」

「体調はどうかね」

「はい、お陰様で元気です」

「ほう……」


 ルビナを見て目を細めた師匠が私を手招きする。有り難い。これ幸いと団長の手をやんわり振り払って師匠の元に向かう。


「どんな魔法を使ったのかね我が弟子。我が姪が昨日とはまるで別人のようだ」


 にこにこ顔で小声で言う師匠。この人の上機嫌は、策を練っている時か、策が成功した時のどちらかがほとんどだ。これはどっちだ?


「……竜皇国との大使になると約束しました」

「おぉ、それはまた君にしては随分と思い切った事をしたものだねぇ」


 そうせざるを得ないように追い込んでおいて何を今更。


「他には何か? 男女の契りの一つも交わしたのかな?」

「する訳ないでしょう」


 危なくはあったけど。


「ふむ、あれ程元気になったなら、何か他にもと思ったのだが……。何にせよ見事な仕事だ」

「ありがとうございます」


 とりあえず策が上手くいっている方のご機嫌のようだ。良かった。


「我が姪もこちらへ」

「はい」


 私の横に並ぶルビナ。

 横目に見ると、確かに昨日ここで見た顔とは違っている。凛とした強さがある。

 良かった。竜皇国に戻る前に、どうにか誇りは取り戻せた様だ。後は無事に送り届けるだけだな。

いつから送り届けて終わりだと錯覚していた?


読了ありがとうございます。

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