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第十五話 契る夜 その七

 窓の隙間から漏れる光が明るくなってきた。外から小鳥の声が聞こえてくる。


「んぅ……?」

「おはよう、ルビナ」

「……おはよぅ、ござぃますぅ……」


 寝ぼけ眼をこすりながら、ルビナが頭を起こす。

 気付かれないように、しびれた腕を握ったり開いたりする。


「ディアン様、早いですね」

「まぁな」


 早いと言うかほとんど寝てないというか。

 顔が近いとか良い匂いとか可愛い寝言とかならまだ寝れたと思う。

 だが寝相で足を絡められたのは致命的だった。

 あれで男の本能にぎりぎりで耐え抜いた私は称賛されて良いと思う。誰にかは知らないけど。


「準備が出来次第、騎士団の詰所に行って、師匠と合流し竜皇国へ転移する。忘れ物のないようにな」

「分かりました。ではまず朝御飯に行きましょう」


 朝食か。この後に待つ面倒なやり取りとそれに対する返しをいくつか想定する。

 ……頭が痛むのは、寝不足のせいだけではあるまい。





「あら騎士様、ルビナちゃん、おはようさん」

「あぁ、おはよう」

「女将さん、おはようございます」

「で、どうだった?」


 にやにやと私を肘でつついてくる女将。ぐぅ、何て想定通りなんだ。


「少し話をして、すぐ眠った。なぁルビナ」

「はい」

「ありゃ、飲ませ過ぎちまったかね」


 恋人だ何だの話は口止めしてある。

 これで女将の追及は逃れられただろう。


「部屋に入った時に抱き付きなって言っただろ? あれはどうしたんだい?」

「水差しを持ったままでは危ないから、とディアン様が言われましたので」

「その後は? 他には何もなかったのかい?」

「あ、その、頭を、撫でて、いただきまして……、えへへ……」


 寝かしつけのあれか。

 満面の笑み、というより表情が溶けてる。そんなに嬉しかったのか?


「それだけかい? 二人で一つの寝台使ってるんだ。他にも何かあったんだろ?」

「それ以外、ですか?」


 ちらりとこちらを見るルビナ。

 ちょっと厳しい顔をして小さく首を横に振ると、ルビナも小さく頷いた。

 よし、ちゃんと約束は覚えているな。何もない、何もないだぞルビナ。


「……その、ディアン様が、人にはあまり言わないようにと……」

「あらあらまぁまぁ!」


 だからルビナ言い方あああぁぁぁ!

 そりゃ女将も目の輝きを増しますよねえええぇぇぇ!

 この流れでそんな事言ったらまぁそうとしか聞こえないだろうよ!


「そうよねぇ! 二人の秘密よねぇ! 野暮な事聞いて悪かったよ!」

「いや、女将、その」


 弁解しようとして、そのためには恋人どうこうの流れを説明しなければならない事に気付く。

 駄目だ。八方ふさがりだ。


「朝食を頼む」

「はいよ!」


 からかわれるのはもう良い。諦めた。

 とりあえずルビナにこれ以上男女の知識を触れさせない事を目指そう。

 それは私でない誰かとつむいでいくべきものだ。


「ではルビナ。朝食の支度が整うまでの間に顔を洗ってくるとしよう」

「分かりました」


 この後竜皇国にルビナを送り届けるのに、朝からこんなに疲れていて大丈夫か私?

 そんな不安をこっそりため息と共に吐き出した。

欲望に耐えてよく頑張った! 感動はしない。



第十五話終了となります。

読了ありがとうございます。


次話から第十六話「怒れる竜皇」になります。

今後ともよろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 厚切り肉を次は一緒に、が何故か切なく感じました。 やっぱりディアンさまは格好良いです、惚れてしまいました。 ここまで理性が硬いのもルビナちゃんを大切に思えばこそですよね、ディアンさま、素敵…
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