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第十五話 契る夜 その五

 少し落ち着いたのか、私の胸の上で心地良さそうにするルビナ。

 実に満足そうなので心苦しいけど、このままじゃ寝られない。


「さぁ寝よう。明日も早い」

「あ、は、はい」


 軽く肩を叩くと、ルビナが頭を上げる。

 胸が軽くなると同時にふと感じる涼しさ。ちょっと勿体なかったかなぁと思っていたら、二の腕にその温かさが出現した。

 見ると腕枕の位置にルビナの頭がそこにあった。

 ちょっ、ちょっとルビナさん!?


「おやすみなさい、ディアン様」


 待って待って、今までは腕を掴んでいたからその分の距離があったけど、今は、私が少し首を動かせば、触れられる位置に、ルビナの顔が、唇が……!


「何だか、眠ってしまうのが勿体ないですね……」


 喋る度に小さく動く唇に目が吸い寄せられる。

 小さく、艶やかで柔らかそうな唇。

 そこに自分の唇を重ねる事が、とても自然な事のように思えてくる。

 って何を考えているんだ私は!


「幸せで、幸せで、溶けてしまいそうです……」


 目を閉じるルビナ。

 口づけを待つかのような体勢。

 今のルビナなら、私が何をしたとしても、きっと嫌がりはしないだろうし、二人きりの今なら口止めをしておきさえすれば誰にも気付かれる事はないだろう。


「……私、こんな幸せをくれたディアン様のためなら、何だっていたします……」


 蠱惑的な言葉に頭の芯が殴られたようにぐらつく。

 こんなにも無尽蔵の信頼と愛情を向けてくれる女性が他にいるだろうか。

 これまでの人生を振り返っても、母親を含めてさえ、いなかったように思える。

 私の中でもルビナの存在は大きくなっている。

 愛しいとさえ思える。

 本当の意味で恋人になったとしても問題は無いんじゃないか。


「っ」


 顔を逸らして舌を強く噛み、欲望を正当化しようとする下劣な思考を遮断する。

 何が恋人だ。

 何が愛だ。

 意味も分からずはしゃぐ子どもを騙すような、詐欺にも劣る下衆な行為だ。


「ディアン、様?」


 私の様子を察したのか、ルビナが目を開け心配そうな声を上げる。しまった。えっとどうしよう。

 何かの呪いかと思う程、誤魔化そうとすると事態が悪化してるけど、今は本音も危険。口づけをしたいなどと言おうものなら、喜んでと言われかねない。

 本音も言えず、誤魔化しも効かないとあれば、私は一体どうしたら良いんだ!?

うわっ……、騎士様の理性、硬すぎ……?


読了ありがとうございます。

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