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第十四話 酒が呼ぶは凪か嵐か そのニ

「……何だこれは」

「わぁ、凄い人ですね。それに飾り付けがいっぱい……」

「いやー、常連さんにちょっと声かけたら、口伝えに広まっちゃったみたいでねぇ」


 食堂は壮行会の様相を呈していた。

 席は満席どころか立って酒を飲んでいる客までいる始末だ。

 壁には恐らく祭りか何かで使っているであろう装飾が、無秩序に飾り付けられている。

 ……おい誰だ、ルビナちゃんを送る会って横断幕書いたのは!

 これじゃ終わるまで部屋に戻れないじゃないか!


「さぁさ、座って座って! 二人が座んないと始まんないよぉ!」


 うぐ、ここで断ったら半ば出来上がっている客達に袋叩きにされかねないな。それに、


「わぁ、お祭りみたいですね! 素敵……!」


 こんなに目を輝かせているルビナを落胆させる訳にもいかない。

 ルビナを伴って席に着く。


「ではルビナちゃんを、と騎士様を送る会を始めます! 乾杯!」

「乾杯!」「かんぱい!」「乾杯!」「乾杯!」「かんぱーい!」「乾杯!」「乾杯!」

「……乾杯」

「乾杯、です」


 今女将私の事ついでで呼んだよね?と言う気持ちは、今目の前で器を差し出すルビナには関係のない事だ。軽く器と器を合わせる。


「さぁ今日はじゃんじゃん飲んでいってね!」

「ありがとうございます!」


 女将が卓に料理を並べると、常連とおぼしき客が集まってくる。


「じゃあルビナちゃん、一杯どうぞ!」

「あぁ! お前抜け駆けしやがって!」

「次、次俺の酒な!」

「はい! いただきます!」


 昨日きのう一昨日おとといは普通に食事をしていたから遠慮もあったのだろうが、今日はルビナを囲んで飲むものと思っているようで、客達はどんどんルビナに酒を注いでくる。

 ルビナが酔い潰れる心配はほとんどしていないが、昨日より飲むと流石に不審がられるだろう。


「ルビナ。酒を注いで貰ったら、相手の器にも注ぎ返すのが礼儀だ」

「分かりました」

「え、注いで貰えるのかい?」

「はい、お注ぎしますね」

「いやぁ、有り難いねぇ!」


 酌女中の真似事をさせるのは気が引けるが、ルビナの飲む量を減らす為と、どれだけ飲んだかをあやふやにする為には致し方ない。


「ルビナちゃーん! こっちに来てー!」

「あ、えっと、ディアン様、あちらに伺ってもよろしいですか?」


 軽薄に声をかけてくる客の声に、返杯をさせたのは失敗かとも思う。

 しかし、ルビナは不快に思った様子もなく、むしろ行きたそうだ。


「折角だ。頂いてくると良い」

「分かりました。行ってきます」


 私以外の人間と良い思い出が出来れば、それもルビナには良い経験になるかも知れない。

 何かあれば不快な思いをさせる前に間に入ろう。

 ルビナと共にごっそり人が離れた卓で、一人そう思った。

可愛くてお酒飲める子を主賓にしたら、そらそうよ。


読了ありがとうございます。

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