第十三話 決意照らす夕陽は紅く その七
「竜を恐れるディアン様が竜皇国に関わるお仕事に志願される理由は、あの、自惚れかも知れませんが、私のため、ですよね……?」
「……」
図星を突かれ、頷けないが否定も出来ない。
騎士団長の所に私一人で行こうとした時もそうだったが、ルビナの理解力や洞察力がどんどん侮れなくなって来ている。
私の沈黙に、ルビナが頬を抑える。
「ごめんなさい、ごめんなさい……。私のせいでディアン様にお辛い思いをさせているのに、それはとても申し訳なくて嫌な事のはずなのに、私、どうしようもなく嬉しく思ってしまっているのです。私が一人でも大丈夫ですと言えたらディアン様を自由にして差し上げられるのに、どうしてもそれが出来ないのです」
謝りながらも嬉しそうなルビナ。
「ならばせめて私がディアン様のお力になれる事を何でもして差し上げたいのです。ですからどうか……!」
縋るような目と声。
だが以前のような、求め、与えられるためのものではない。
与え、支え、私の隣に立つために。
「ディアン様……!」
強い意志を宿す紅玉の瞳。
……そうか。ルビナはもう私に守られるだけの存在ではなくなったのだ。
私が望んだ、自信を持ち、自分のするべき事を自分で決められる、自立した存在に。
「分かったルビナ」
「ディアン様……。では……?」
「あぁ、ルビナの力を貸してくれ。私にはルビナが必要だ」
「あ、あぁ……」
「?」
「ありがとうございます!」
「!?」
ルビナが突然私の胸に抱き付く!
不意打ちに驚く私の胸に、感極まったのか溜まった涙が溢れ出す!
「お! いいぞ!」
「きゃあ大胆!」
「いよっ! 色男!」
隠れていた野次馬がそれを見てわいわいと騒ぎ出すが、安心しきった様子で嬉し泣きするルビナを引き剥がすという非人道的な行いが出来るはずもない。
「やるな兄ちゃん! 男だぜ!」
「良いもの見せてもらったよ!」
「素敵ぃ……!」
私達に向かって思い思いの歓声と拍手を送る野次馬達。
これじゃあまるで恋物語の最後のようじゃないか。
やめてくれ。私とルビナは恋人ではないし、
「ルビナ、これからもよろしく頼む」
「はい!」
今日ここで物語が終わる訳でも無いのだから。
これは漢気か、日和っただけか。
第十三話終了となります。
読了ありがとうございます。
次話から第十四話「酒が呼ぶは凪か嵐か」になります。
今後ともよろしくお願いいたします。