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第十二話 幸せは短過ぎて その四

 師匠の伝言を伝え、団長の顔が青から白くなるのを尻目に詰所を出た。

 まぁ高級酒の蒐集しゅうしゅうは貴族のたしなみだから、出せないと言う事は無いだろう。幾らの酒を失う事になるのかは知らないけど。

 あれだけ良い食事をしてるんだから、少し位痛い目を見れば良いんだ。


 ……いかん、苛立ちが思考を妨げる。ルビナの気分を向上する事だけを考えよう。


「ルビナ、先程の食事はどうだった」

「あ、はい、美味しかった、です……」


 うーん、美味しそうに聞こえない。


「今日はこの後どこか行きたい所はあるか」

「……思い付きません。ディアン様にお任せします……」


 駄目だ。まるで抜け殻だ。無理も無い。

 いつまでもは無理でも、しばらくは一緒にいられると思う事で乗り越えようとしていたのを、突然明日の朝までと区切られてしまったのだから。

 しかしこのままという訳にもいかない。どうしたものか。


「お、そこ行くお二人さん! 何だい喧嘩でもしたのかい? 浮かない顔じゃないか!」


 不意に声をかけられ振り向くと、劇場の入口で客引きらしき男が手招きしていた。


「気が晴れない時は、うちの舞台見ていくと良いよ! 元気になること間違いなし!」

「ふむ、演劇か。今はどんなものを上演しているのだ」

いにしえの騎士の冒険物語さ! 派手な戦いと劇的な展開、必見だよ!」


 うーん、使い古された内容ではあるが、逆に言えば分かりやすく、初めてであろうルビナも楽しめる可能性は高い。


「ルビナ、どうだ。演劇は初めてだろう」

「……はい。ディアン様が観たいのであれば……」


 ルビナの目に生気と言うものが感じられない……。

 少し強引にでも気分を変えさせた方が良いかな。


「では二人分頼もう」

「毎度! じゃこちら入場券になるんで、中の者に渡してください!」

「分かった。……行こうルビナ」


 少しためらったが、ルビナの手を握った。


「!」


 びくりと震える手。

 そう言えば私からルビナの手を握ったのは初めてだ。

 驚かせてしまっただろうか。


「大丈夫かルビナ」

「は、はい」


 握り返してくるということは、嫌ではなかったようだ。

 強く引かないように気を付けて、私はルビナと劇場の入口をくぐった。

手を握られて、気持ちちょっと回復。


読了ありがとうございます。

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