第十一話 恐怖の断罪 その七
「ふぅ、ごちそうさま」
「師匠、ごちそうさまでした」
「ごちそうさまでした。とても美味しかったです。ありがとうございます」
「なんのなんの。女性に美味しい物を食べていただくのは男の喜びの一つですからね」
師匠のおかげで食べられたのは間違いないが、自分が用意した訳ではない物でここまで言える精神は凄いと思う。見習う気は無いけど。
「さて、腹ごしらえも済んだところで自己紹介をいたしましょう。私はシルルバ・ギーン。王国の相談役と言う、まぁ暇な遊び人をさせてもらっております」
暇な遊び人? 何を言っているのかと思ったが、師匠がいなければ今の王国は無いと言われる程の貢献を盾に、暇潰しに貴族や高官を弄ぶ。成程、確かに暇な遊び人だ。
「おや我が弟子、何か言いたい事でも?」
「いえ別に」
そんな事を口に出すほど私は人生に絶望してない。
「弟子の紹介はいりませんね。ではお嬢さん、お名前を教えて頂けますか」
「あ、はい。ルビナと申します。ディアン様の旅のお供をさせて頂いております」
「ほう、ルビナ。良い名前ですね」
「ありがとうございます。ディアン様に付けて頂きました」
「ほう……」
嬉しそうなルビナ。だがおかしい。ルビナの素性については手紙で知らせているはずだ。師匠は今更何を訊こうとしているんだ……?
「我が弟子ながらなかなか良い名を付けたものです。だが折角の出会いです。正式な自己紹介を交わすとしましょうか」
「師匠。正式な自己紹介、とは」
何だ何だ!? 凄く嫌な予感がするぞ!?
「竜皇国皇弟エーメルド・サン・ディライトです。お久し振りですね我が姪、ガネット・サン・ディライト第一皇女」
「叔父、様……?」
え、今師匠何て言った?
悪い予感は斜め上を直撃。
第十一話終了となります。
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次話から第十二話「幸せは短過ぎて」になります。
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