第十一話 恐怖の断罪 その六
豪華な応接室。目の前に並ぶ、朝食とは言い難い豪華な料理。
「あの、い、いかがでしょうか?」
「ほう、これはなかなか。では内密な話をいたしますので、人払いを」
「畏まりました!」
一礼をして部屋を出る団長が、もはや一流の執事に見えてきた。
これまでの騎士としてのあり方に問題があったとは言え、この扱いは流石に可哀想に思えてくる。
「師匠、それでこんなに急いで来たのは」
「まぁそう焦らない事だよ我が弟子。折角の料理が冷めてしまう。君達も一緒にどうだね?」
ここまで転移魔法を使ってまで来たというのが嘘のような、いつもの飄々とした師匠。
こう言う時は素直に従っておくに限る。
「……いただきます。ルビナも」
「は、はい。いただきます」
ルビナに勧めつつ小刀と肉叉を持つ。
わ、何だこれ。肉柔らかい! 騎士団長ともなると良い物食べてるなぁ。
それにこの魚、あの幻の!? 焼いてるのに汁気がたっぷりでふわふわだ!
野菜もこの街で手に入る最高級品だろう。こんな味だったんだ!
「ふわぁ……」
ルビナはと見ると、目を見開いて固まっている。
かと思ったら夢中になって食べ始めた。
結果として良い物を食べさせられた事に関してだけは師匠に感謝しよう。
「ふむ、もう少し質の良い料理を期待していたのだがね。まぁ急ぎで用意させた以上あまり贅沢を言うべきではないか」
十分贅沢だよ!
ルビナが食べた牛の厚切り肉ですら霞むほどの高級肉、季節に何度かしか獲れないという幻の高級魚、庶民なら年に一度食べられたら贅沢と言う高級野菜。
急ぎでこれだけ整うという事は、あの団長はこの豪華な食事を日常的に食べているのだろう。
さっき思った可哀想を取り戻すべく、私は肉汁のしたたる高級肉を頬張った。
唐突に始まる美食物語。
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