第十一話 恐怖の断罪 その五
「やぁ我が弟子。壮健そうで何よりです」
「師匠、一体何故……」
「何故とは不思議なことを訊く。君が私に手紙を寄越したのではないかね?」
確かに送った!
でも王都までは早馬でも二日の距離。
手紙は最速でも昨晩か今朝届いたはずなのに、何でもう師匠がここにいるの!?
「あんな手紙をもらったら、私は何をおいても駆けつけるよ。それこそ特別な移動手段を駆使してでも、ね」
そうか転移魔法!
各地の名物の食べ歩きに便利だと、色々なところに転移目標を置かされてたっけ……。
でも魔力の消費が大きいから、他人のために使うのは御免だとか言ってなかったっけ?
「しかし急ぎで来たので少々疲れた。……団長殿、この二人に大切な話もあるので、声の漏れる心配がなく、くつろげる部屋をお借り出来ますかな?」
「は、はい! 今すぐに!」
真っ青になって固まっていた団長が、師匠の言葉に飛び上がる。
無理もない。師匠の王国内での権力は王族並みだ。
そんな絶対的な立場から突きつけられた、謙虚に見せかけた強烈な脅し。
団長としては何を要求されても呑む事しか出来ないだろう。
「そうそう、朝食もまだだったのでね。何か私の口に合うものを用意してもらえると助かるのですが」
「承りました! 急ぎ手配いたします!」
団長はすさまじい勢いで部屋を出て行く。
具体的な要望を示さず、後出しで何とでも文句を付けられる要求の仕方は、意地の悪い先輩の新人いびりのようだ。
くっくっと笑いを噛み殺している師匠は本当に楽しそうだ。
味方でいてくれる事は本当に頼もしいが、その性格はどうかと思う。言えないけど。
頼れる師匠(下手に頼ってはいけない)。
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