第十一話 恐怖の断罪 その三
「おはようございます、ディアン様」
「……ん、あぁ、おはよ、う……?」
声に目を開けると、ルビナの笑顔が飛び込んできた。
え、あれ、朝!?
「窓を開けてもよろしいですか?」
「……あぁ、頼む」
いそいそと寝台を降り、窓を開けていくルビナ。
明るくなっていく部屋。
まずい、完全に寝てた!
対策何も思いついていないのに!
「今日はどこに行きましょうか?」
うきうきしているルビナには悪いが、今日は負けられないけど負けそうな男の戦いがある。
「それなのだが、今日は用事があるので、それが終わってからになる。ここで少し待っていてくれ」
「ご用事、ですか……」
さっと表情を曇らせるルビナ。
やっぱり一人にされるのはまだ不安か。
「あの、お邪魔にならないようにいたしますので、連れて行ってはもらえないでしょうか?」
まぁこれまでの流れからして、素直に待っていてはくれないよな。
でもルビナを危険にさらす可能性がある以上連れて行く訳には行かない。
それにいざとなったら土下座も辞さないこの状況で連れて行きたくない。
女将に事情を話して面倒を見てもらえないだろうか。
「いや、少々厄介な用事でな。私だけで行く方が面倒が少ない。ルビナは女将とでも話して時間を」
「ディアン様……」
あれ? 何で潤んだ目で私の手を握るの?
こう言えばルビナなら、私に迷惑をかけないように、と引いてくれると思ったのに!
あああ引くどころか近い近い近い!
「昨夜私をかばったせいで大変な事になっているんですよね……」
う。女将とのやり取り、聞かれていたのか。
私も表情を装ったり誤魔化したりする余裕がなかったとは言え、ルビナの理解力の高さを甘く見ていた。
寝台でしっかり腕を掴んでいたのは、こっそり抜け出すのを防ぐためだったのかも知れない。
つくづく不覚。
「私に出来る事は何もないかも知れません。でもディアン様お一人で無理をなさらないでください……。私のせいでディアン様が辛い思いをされるのは耐えられません……!」
これでは待たせた方が余程ルビナの心に良くない。
……仕方がない。
「分かった。私を支えてくれるか、ルビナ」
「はい! 勿論です!」
ルビナの顔から雲が晴れた。
何をおいてもこのルビナの笑顔は守らなければなるまい。
よし覚悟は決まった。土下座だ。
先手の土下座で相手の怒りを少しでも減らそう。
私が商人時代に何度となく危機を脱してきた究極の土下座の力を披露してやろうじゃないか。
半ば自棄気味にそう決意した。
男らしい、のかな?
読了ありがとうございます。