第十一話 恐怖の断罪 その二
「あああぁぁぁ、れ?」
光はどこに?
暗い中に私が伸ばした手の輪郭がおぼろげに見えるだけだ。
部屋の中、夜はまだ明けていないようだ。
夢か……。
「すぅ……、すぅ……」
ルビナはまだ夢の中、か。起こさずに済んで良かった。
しかし昨日と違い、腕はしっかり押さえられている。
伝わる柔らかさと甘い香りに思考が乱されるが、今はそれどころじゃない。
悪夢を現実にしないためにも対策を考えなければ。
まず昨日女将から聞いた情報を整理しよう。
あの騎士団長は貴族の出身で最近着任したばかりだが街の評判はかなり悪い。
街の人を平民と見下し、立場をかさに好き勝手振る舞い、賄賂でも送らないと話にならないそうだ。
貴族出身の騎士の見本のような団長だ。
商人出身の私とは明らかに相性が悪い。
「んん……、んにゃ……」
逆に言えば自分の利益に敏いので、交渉の余地はある。あるが、団長が何を利益と思うかが問題だ。
私にあって団長が欲しがりそうなものと言えば師匠との関係位だけど、師匠貴族嫌いだからなぁ。
勝手に約束を取り付けようものなら、代償に何させられるか分かったものじゃない。
「えへへぇ……、ぅゅぅ……」
国の特使である私に直接手出しはできないだろうが、ルビナを好きにさせろ位の事は言いかねない。
それは絶対に飲めないし、どうしたものか。
「でぃぁんしゃまぁ……」
駄目だ! 集中出来ない!
前の悪夢の後には恐怖で男の本能は大人しくなったが、今回は竜になる姿まで見たのにルビナに対する恐怖心がほとんど無い。
現実のルビナは私を傷つけたり困らせる事はしない、そんな信頼と自負があるせいだろうか。
いや今現在ルビナのせいで集中出来なくて困ってはいるけど。
「でぃぁんしゃま、おぃしぃ……」
一緒にご飯食べてる夢だよね?
私食べられてないよね?
やっぱりちょっと恐いかなと思いながら、再度対策を練るために目をつぶった。
二つの意味で夢オチ。
読了ありがとうございます。