第九話 心、うつろい その六
「あ! お母さん!」
「タルク! タルク!」
抱き合い、泣き出す親子。
一件落着と言ったところか。
「あのおねぇさんとおじさんがつれてきてくれたの」
「ありがとうございます! 本当にありがとうございます!」
私達に気が付き、何度も頭を下げる母親。
……おじさん……。
「お母さんと会えて良かったね」
「今度からはぐれないようにな」
「ありがとう! おねぇちゃん!」
私は?
いや実質何もしてないけど。
「ありがとうございました!」
何度も頭を下げる母親と、笑顔で手を振るタルクに別れを告げ、元来た道を歩く。
「すぐ見つかって良かったですね」
「ルビナの魔法のおかげだな」
「ディアン様が一緒に来てくださったからです」
「本当に一緒に居ただけだったがな」
「それが私には大事なんです」
嬉しそうに言うルビナ。
私にしてみれば、ルビナが自分の意志で動いた事が、しかもそれが自分のためでなく他人のためだった事が純粋に嬉しい。
「では氷菓子のお店に戻りましょう!」
「あぁ」
しかし戻った時には列は無くなっていた。
これはもしかして……。
「売り切れ……」
「……残念、だったな」
閉店を示す看板の前で愕然とするルビナ。
当然と言えば当然か。
あれだけの行列、いつ売り切れになってもおかしくなかった。
「あら、さっきのお客さん!」
店を片付けていた先程の女性がこちらに気が付いた。
「迷子の子、どうなりました?」
どうやら私達の行動は見られていたらしい。
「あぁ、無事に母親の元に送り届けた」
「それは良かった! じゃあちょっと待っててくださいね」
店の中に引っ込む女性。しばらくすると、何かを持って出てきた。
「はい、どうぞ」
私達に差し出されたそれは、ひんやりとした冷気を放っていた。
女店員が差し出したものとは……!
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