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第八話 生まれた違和感 その三

「ここが市場だ」

「人がいっぱいですね……」


 町の中でも一番人と物が集まる場所だ。

 ルビナが気に入る物もあると良いけど。


「あ、ディアン様、あれは……?」


 ルビナが目を付けたのは、小さな雑貨屋だった。


「見てみるか」

「はい」


 今朝の話ではあまり身を飾るものに興味はなさそうなルビナだったが、こういう子どもの玩具箱のような雑多に品が並べられていると、何とはなしにわくわくするのかも知れない。私がそうだし。


「あ、これ……」


 ルビナが手に取ったのは、小さな赤い宝石があしらわれた革製の装飾品だ。

 端に金具が付いているからどこかに巻き付けるのだろうが、どこに付けるんだ?

 腰に巻くには短く、腕に巻くには長いが……。


「ディアン様、これが私の名前の元になった宝石ですか?」

「いや、似てはいるが違うだろう」


 値段が安すぎるし、本来市場の雑貨屋に並ぶような宝石じゃない。

 ほぼ間違いなく模造品だろう。


「そうなんですか。でも綺麗ですね」

「いやぁ、お目が高い! それはお値打ち物ですよ!」


 胡散臭い雰囲気の店主が近寄ってくる。


「どうです? 試しに身に着けてみては?」

「よろしいのですか?」

「どうぞどうぞ! さ、旦那、手伝って差し上げてください」

「これは初めて見るのだが、どこに着ける装飾品なのだ」

「首にぴったり巻き付けるように着けるんですよ。首の後ろで金具を留めてください」


 言われるままに後ろに回って金具を留める。


「……いかがですか、ディアン様?」

「うぅむ……」


 振り向いたルビナの首で輝く赤い宝石。

 似合うと言えば似合うんだけど、革がぴったりと首に巻き付いてる感じが、何と言うか……。


「最近流行りなんですよ! 恋人に贈って、お前は一生俺だけのものだ、ってのが!」


 畜生! やっぱり首輪って事か! 駄目だ! こんなの買う訳にはいかない!


「ルビナ、他の物も見てみよう」

「あの……、これではいけませんか?」


 首飾りを撫でるルビナ。あれ、嫌な予感……。


「……気に入ったのか」


 これでルビナが、私はディアン様の所有物ですから、とか言ったら成長の無さに愕然とするぞ。


「この宝石を持っていればディアン様から離れた後も、私に付けてくださった名前を思い出して、その、……頑張れると思うんです」


 ごめんなさい。成長してないのは私でした。

これは反省もやむなし。


読了ありがとうございます。

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