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第五話 守るべきもの その四

「これ、街、ですか……」

「あぁ、城塞都市は初めてか」

「はい、大きな壁ですね」

「これの中に街がある。この壁は街をぐるりと取り囲み、外敵から守っているのだ」

「へぇ……」


 ルビナは興味深げに城壁を見上げている。

 昔はこの上なく頼もしく感じたものだが、竜の脅威を知ってからは焼き釜にしか見えなくなってくる。

 ……よそう。竜を怒らせなければそんな惨劇は起こらない。


「王国騎士のディアン・オブシだ」


 門番は幸い行きの時に顔を合わせていた者だった。


「あぁ、特使の! お疲れ様です。……そちらの方は?」

「相談役のシルルバ・ギーン様所縁ゆかりの客人だ。身分は私が保証する」

「シルルバ様の!? ……承りました。では書類をこちらで」


 門番の詰所で書類を記入する。

 身分証を持たないルビナは本来街には入れない。だが、


「これで良いか」

「確認させていただきます。えー、ルビナ・パイロープ様、女性、二十一歳、商人、シルルバ相談役の母方の従弟の子に当たる方、と。はい、受理しました」

「感謝する」


 師匠の名前があれば、道中適当に考えた身分でも容易に通る。それほどに師匠がこの国にもたらした恩恵は大きい。

 勿論後日確認はされるが、私の名前での偽証なら師匠は難なく承認するだろう。


「一泊して王都に向かわれますか?」

「いや、使いを出して返事を待ちたい。四、五日滞在する事になるだろう」

「そうですか。宿舎をお使いになるのでしたら、連絡をしておきますが」


 竜の国も近く、非常時には最前線になるこの街には、騎士・兵士用の大規模宿舎がある。

 無償で泊まれる上三食つくのは魅力だが、


「感謝する。だが客人がいるのでな。街で宿を取りたい」


 ルビナを男所帯の宿舎に泊めるのは避けたい。あともれなく付いてくる厳しめの訓練も要らない。


「でしたらここを真っすぐ行って、十字路を左に行った所にある水鳥亭が落ち着いていて良い宿ですよ。定宿にしている騎士団関係者の方も多く、詰所にも顔が利くので、連絡も取りやすいです」

「助かる。探してみよう」

「ではこちらを」


 門番から二人分の許可証を受け取り、街に入った。

城塞都市は、壁の上からこんにちはされたら詰む。


読了ありがとうございます。

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