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第五話 守るべきもの その二

「おらぁ! 何黙ってるんだぁ!? 痛い目に遭いてぇのか!?」


 っつ。農具の柄で頭を小突かれる。

 こいつ……! 私が騎士だという事が分からないのか!

 騎士に手向かえば村ごと処罰される事さえ有り得るというのに言うのに! 私にそんな権力はないけど。


「ディアン様……!」


 ルビナが息を呑むのが聞こえる。

 まずい。早々に解決しないとまたルビナに不要な不安をかけさせる。

 交渉に時間はかけられないから、出費は避けられないか……。


『風よ、彼の者達を宙へ!』

「う、うわあああぁぁぁ!」

「ぎゃあああぁぁぁ!」


 急な突風!

 反射的に覆った目を無理矢理こじ開けると、私達を囲んでいた男達が宙に浮いてる!

 私とルビナはそのままで、男達だけ宙に浮く突風なんて自然に起きるはずがない! という事は!


「ディアン様! 大丈夫ですか!? お怪我は……!?」

「あ、あぁ、大した事はない、が……」


 やっぱりルビナの魔法か!

 師匠から竜族は飛翔や吐焔の補助に使用するため、実は火属性より風属性の魔法が得意な者が多いとは聞いていたけど、濡れた髪を乾かす程度ならともかく、


「助けてくれえええぇぇぇ!」

「死にたくねぇよぉ!」

「おがあぢゃあああぁぁぁん!」


 狙った人間だけを身長の三倍位の高さまで浮かすって凄過ぎないか!?

 あ、成程。昨日の薪を短時間で集めたのもこの魔法の応用かってちょっとすっきりしてる場合じゃない! 何とかしなければ!


「ルビナ、彼らをゆっくり降ろしてやってくれ」

「しかし……」


 ルビナは不満そうだ。

 見上げる男達への視線には殺意すら感じる。恐い。

 農家そのものに対する怒りが混じってる気がする。

 男達なんかどうでもいいから逃げたい衝動が沸き起こる。


 だがルビナを人殺しにする訳にはいかない。

 恐怖心を押し殺してルビナに向きあう。


「彼ら農民は私達の糧の作り手だ。無闇に傷つけてはならない」

「っ!」


 肩に手を置いた私の言葉にルビナの顔から怒りの色が消え、同時に後悔の色が浮かび上がる。

 あ、男達の高度がひゅっと下がった。あんなのされたら私ならちびる。


「わ、私は余計な事をしてしまったのでしょうか……」

「いや、正直助かった。彼らを傷つけずに場を収めるのは難しかったからな。感謝する」

「!」


 おぉ、今度は高度がぐんっと上がった。下げて。ゆっくり下げて。


「では……『風よ、彼の者達を地に下ろせ』」


 ゆっくりと男達が地上に降ろされる。

 全員へたり込んでまともに立てなさそうだ。

 ルビナにちょっかいを出そうとしたり、小突かれた当初は怒りもあったが、今は哀れみしかない。


「君達の苛立ちは良く分かる。私も商人の末子に生まれて、家では未来も無いのにこき使われるだけの時期があった」

「え……?」


 私の言葉に顔を上げる男達。


「その後騎士に志願し、今の立場に至った。騎士の試験は簡単ではないが、現状が不満であるならそんな選択肢もある」

「騎士、様……?」


 ようやく誰に喧嘩を仕掛けたのかを理解して青ざめる農民達。

 名乗らないと騎士と気づかれない私ってどうなんだろ。


「今回のことは不問にする。もう旅人に迷惑をかけるなよ」

「は、はい! あ、ありがとうございます!」

「行くぞルビナ」

「あ、はい」


 涙声で土下座する男達。ぽかんとしているルビナを促して速足で立ち去った。

ぅゎ りゅぅ っょぃ。


読了ありがとうございます。

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