第四話 闇の中の光 その六
「はっ!」
目を開けるとやや明るくなった森の中。
横を見るとまだ寝息を立てているルビナ。
……今のは夢か。
思考のまま眠りに落ちていたようだ。あぁ怖かった……。
辺りの明るさを見る限り、もう夜が明けようとしている。随分しっかりと眠れていた様だ。
……目覚めはあまり良いものではなかったが。
見るといつの間にか私の腕がルビナの胸にしっかりと抱きしめられてる。これは起こさないと身動きが取れそうにない。
だが悪夢のおかげか、腕の防具を外しておけば良かったとかほとんど思わない。
その点だけはありがとう悪夢。
「ルビナ」
「んぅ……」
起きない。空いている手で頭を揺すってみる。
「朝だぞルビナ」
「あぅ……、ぉ、とぅ、さま……?」
寝ぼけている。夢の妖艶かつ恐ろしい姿との落差に、思わず頬が緩む。
竜の誇りはどうかは知らないが、親への想いはちゃんとあるようだ。
その気持ちが高まれば穏便に国に帰すことも可能になるかもしれない。
「おはようルビナ」
「あ! ディアン様! お、おはようございますっ!」
我に返ったルビナは跳ね起きた。私もようやく身を起こす。
「よく眠れたか」
「あ、はい、その、ディアン様のおかげです」
「ならば良かった」
男の本能や恐怖と闘った甲斐があったというものだ。
「あの、ディアン様の眠りのお邪魔にはなりませんでしたか?」
ん~、夢見は悪かったが、思ったよりぐっすり眠れたのは事実だ。
「あぁ、問題なかった」
ほっとした表情のルビナ。
「では、あの、こ……も……」
「顔を洗って朝食にするぞ」
「は、はい」
小声で「これからも」ないし「今後も」と聞こえた気がしたけど、聞き返すのは危険だ。川の流れに流すことにしよう。
川の流れに流そうと、夜は毎日やって来る。
第四話終了となります。
読了ありがとうございます。
次話から第五話「守るべきもの」になります。
今後ともよろしくお願いいたします。