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第四話 闇の中の光 その五

「……んしょっと」


 いそいそと私の隣に来るルビナ。

 なるべくそっちを見ないようにしつつ、火が長持ちするよう薪を組みながら、深呼吸深呼吸。


「ではディアン様、おやすみなさい」

「あぁ、おやすみ」


 仰向けに寝転がると、ルビナが腕を掴んできた。

 大丈夫だよね? 寝ぼけて防具ごと握りつぶしたりしないよね?

 仮の姿とは言え女性と同衾どうきんしてるそれとは別の緊張感が身体を強張らせる。


「ディアン様のお傍だとほっとします……」

「そうか、それは良かった」

「あぃがと、ごじゃます……」


 早っ。もう寝息を立ててる。よっぽど疲れていたのか、それともこれまで安心して眠れてはいなかったのか。


 あどけない寝顔。そう言えばルビナは幾つなんだろう。

 竜が幾つから成人、いや成竜なのか分からないけど、怒りに任せて国を出たり、誇りのために安易に身を投げ出そうとしたり、ちょっとした事で不安に囚われ泣き出したりする辺り、まだ子どもなのかもしれない。

 今の姿は村の女性を模したと言っていたので、見た目よりはるかに幼いと、子どもなんだと考えた方がいいだろう。

 そう、ここにいるのは子ども。甘えたい盛りの子ども。

 むぅ、駄目だ。人間は視覚に支配される生き物。目をつぶろう。


「くぅ……、くぅ……」


 あああぁぁぁ! 目を閉じると寝息や髪の良い匂いを妙に意識してしまう! 仮の姿なのに女性とすれ違った時の甘い匂いがする! 水浴びの時にはいつもの石鹸しか使ってなかったのに! 町長の家に泊まった時に何か付けたのか!?


「すぅ……、すぅ……」


 別のことを考えよう! えっと次の街には騎士の詰所があるから、そこで馬を借りられないか頼んでみよう。書簡も出来るだけ早く届けた方がいいし。

 あ、でも馬二頭の借用は渋られるかも知れないな。そもそもルビナは馬に乗れるだろうか。かと言って二人乗りでは時間がかかる。ルビナが馬に乗れないなら早馬で書簡を届けてもらう方が早いな。同時に師匠に手紙を届けてもらい、判断を仰いだ方が確実かも知れない。

 待てよ、一度王都に戻ってもしルビナを竜皇国に送り返すとなるなら、街で待機していた方が早い。

 しかし師匠はルビナの処遇をどう考えるだろうか。竜皇国との関係性を考えれば保護からの送還だろうけど、師匠ならそれ以上の策があるかも知れない。

 何せ師匠は竜の


「ディアン様」

「!?」


 声に目を開くと、暗闇の中紅い光が二つ。え、あ、ルビナ!?


「ど、どうしたルビナ」

「ディアン様……」


 胸の上に乗られているのに重さを感じない。

 女性の身体ってこんなに軽いのか!?


「ディアン様は私の事をどう思っておられるのですか?」

「ど、どうって……」


 こんなに女性に近づかれていて、どう思ってるって聞かれても、駄目だ、男の悲しい本能が!


「女として見て頂いておりますの? それとも……」


 紅い光が竜の瞳に変わる……!


「竜として恐れ てお いで で すの ?」

色っぽさで目を引き付けてからの恐怖展開は王道。


読了ありがとうございます。

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