第三話 一難去ってまた二難 その四
ルビナに、失われた麦の事、行商人が値を釣り上げている事、恐らく金銭的な援助を求めているであろう事を話した。
私の財布事情は伏せた。
「……といったところだ。何でも思った事を話してくれ」
「分かりました」
ルビナは少し俯いて考えている。
ここでルビナが解決策を提示できたら、的外れでも褒めてあげよう。
「……お金があれば、解決するのですか?」
「まぁ一時しのぎにはなるな」
「では」
ルビナは自分の腕をまくって差し出した。
「私の皮を剥いで売りましょう」
何言ってんのこの子おおおぉぉぉ!?
「剥いだ皮は身体変化の魔法の影響が消え、鱗に戻ります。私達の鱗は、人間の社会で装飾品の材料になると聞いたことがありますので、それでお金を作りましょう」
確かに竜の鱗は持って行く所によっては十倍量の金でも飛ぶように売れる。数枚あれば値上げ分など簡単に賄える。
この町での換金は難しいが、件の行商人に依頼をすれば飛びつくだろう。交渉でも優位に立てる。
ついでに言えばその利益の一部で、馬車の一台ぐらい都合してもらえるだろう。旅も楽になる。
が! 仮の姿とは言え女性の皮を剥いで売るなんて猟奇的な真似できる訳がない!
「あ、勿論ディアン様のお手を煩わせは致しません。何か刃物をお貸し頂ければ自ら剥ぎますので」
ルビナは私の沈黙の理由を別方向に解釈している! 違うそうじゃない!
駄目だこのままだと目の前で凄惨な光景が繰り広げられる事になる! 何とか丸め込まないと……!
「成程、ルビナの鱗には確かに価値があるだろう。だが私達は明日にはこの町を発つ」
単なる否定じゃ提案させた事が逆効果になる! 何か、何かルビナのお陰で、となる要素はないか!
「金を与える事は簡単だ。だがこういった事態は今後も起こりうる。継続的な解決策を検討する必要があるのだ」
「……浅はかでございました」
頭を回せ! 自分の皮を剥いでまで何かをしようとしたルビナに……、皮、皮!?
「いや、そうでもない。ルビナの話で一つ対応策を思いついた。少し手伝ってもらえるか」
「はい、分かりました」
まだ厨房は開いているだろうか。ルビナを伴って私は階段を下りて行った。
自分の価値を切り売りしてはいけません。
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