第三話 一難去ってまた二難 その三
「さてと……」
案内された部屋で寝台に横になり、天井を見つめながら、町長からの依頼をまとめる。
町で管理している麦蔵に不備があって、貯蔵していた麦が腐った。
やむなく町の外から仕入れようとしたら、行商人が値段を釣り上げてきた。
そのせいで麦が不足し困窮している。騎士の力でどうにかしてほしい、と。
だが、旅の騎士の権限で行商人をどうにかできるとは考えていないだろう。
また釣り上げていると言っても通常の三割増し程度。勿論苦しい値上げではあるが、領主や国が動くような事ではない。
要は金銭的な支援をしてほしいという事だ。
貴族や騎士との接点が薄い小さな町では、そういった階級は皆金持ちで、人々に施して当然と思っている節がある。
そんなこと全然ないから!
国の予算が税から賄われている以上、雇われ騎士の給金なんてたかが知れているから!
領土持ちの貴族や騎士で、金山持ちや重課税を強いている所なら別だろうけど!
しかし町長の強い勧めと懐具合の関係で、この町長の家に一泊させてもらう以上何かの対策を立てなければならない。
「ディアン様」
扉を叩く音と共にルビナの声がした。
「ルビナか。どうした」
「入っても良いでしょうか」
「あぁ、今鍵を開ける」
扉を開けてルビナを出迎える。
「お休みのところ申し訳ありません」
「どうした。何か困った事でもあるのか」
人里での生活は馬小屋だけだろうからと、一応部屋に案内された時に必要な事は一通り教えたつもりだったが、何かあったのか?
「何かディアン様のお力になれる事は無いでしょうか」
「急だな。どうした」
「ディアン様は私を救う為に馬を失われました。その上食事を頂き、身体を清めて頂き、服を頂き、あの様な豪勢な夕食を頂き、一人用の部屋まで頂いているのに、何もお役に立てないままでは心苦しく思います。どうか役目を与えてください」
あぁ、そうだった。こっちも何とかしないと。ただ養われているだけでは、誇りは失われたままだ。とは言え今すぐに頼める事なんて……。
「やはり、私ではお力になれる事などありませんでしょうか」
いかん。まずい。ある、いや作る。
「そうだな。今町長の依頼の件への対策を考えている。人と話しながら考えると頭を整理しやすいと聞いた事があるので、良ければ話し相手になってくれるか」
「分かりました」
とっさの思いつきではあるが、行き詰っている今の思考も、会話の中で何かがつかめるかもしれない。そうしたら、ルビナのお陰だ、と褒めればいい。よし!
ということで簡単に今私が考えている事を説明した。
表題回収。
読了ありがとうございます。