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第三話 一難去ってまた二難 その二

「ここが良いだろう」


 見つけた店は落ち着いた雰囲気の店だった。これまでの経験から、こういう店は大体外れがない。


「いらっしゃいませ」

「二人だ。出来るだけ奥の静かな席を頼む」

「かしこまりました。……あの、王国の騎士様で?」

「あぁ」

「そ、そうなんですね」


 何だろう、微妙な空気。以前騎士の誰かが狼藉でも働いたのだろうか。


「あ、申し訳ありません。ご案内いたします」


 入店を断られなかったので一安心。

 さて今はとにかく食事だ。席について献立表を開く。


「ルビナ、何か食べたい物はあるか?」

「ディアン様にお任せいたします」


 好みが分からない状態で任されるのが一番困る。では折角だから、と……。


「そうだな、牛の厚切り肉と鶏肉の一枚焼き、それに生野菜と麦餅をそれぞれ一つずつ」

「あ、はい、あの、麦餅はただいま品切れでございまして……」

「品切れか。では麦餅は無くて構わない」

「ありがとうございます。では少々お待ちください」


 主食である麦餅が品切れとは珍しい事もあるものだ。ともあれ待とう。


「お待たせいたしました」


 さほど待つでもなく料理が運ばれてきた。私の前に厚切り肉を置こうとする給仕に声をかける。


「あ、待ってくれ。厚切り肉はそっちだ」

「え?」


 きょとんとする給仕とルビナ。まぁ立場を見れば私の方が高い物を食べると思うだろな。


「あの、ディアン様。良いのですか?」

「構わない。ルビナに食べさせようと思って注文したのだから」

「しかし私がディアン様より豪華なものを食べるという訳には……」

「私は鶏肉が好きだから注文したのだ。値段を気にする事はない」


 はい嘘つきました。厚切り肉大好きです。さっきの服代と今後の旅の予定を考えて、ここで二人分頼む踏ん切りがつかなかっただけです。


「いただきます」

「……では、いただきます」


 少し逡巡しゅんじゅんしたが、私が鶏肉を食べ始めたのを見て、ルビナは小刀と肉叉を持った。

 あ、使い方分かるかな? それとなく見ると、私と手元とを見比べながらだが、何とか肉は切れている。

 教えるまでもなく学んでくれているのは有り難い。


「! お、美味しいです……!」


 切った肉を恐る恐る口に運んだルビナが歓声を上げ、どんどん食べ進めていく。

 良かった。口に合ったようだ。


 私の鶏肉もなかなかに美味い。

 一番安いからと注文したが、下拵えが丁寧なのだろう。

 汁気がたっぷりで肉本来の旨味が出ている。

 またこのかけ汁が良い。焼いて鶏から出た脂に柑橘系の果物を少し足して、爽やかに仕上げている。

 付け合わせの崩し芋に深みが足りず、脇役どまりなのが惜しい。


「美味しい……。こんなに美味しい物を食べたのは生まれて初めてです……!」


 涙ぐんでる。無理もない。今までが草だから。

 給仕がちらちらこちらを見てる。大丈夫かな。日ごろ碌な物を食べさせていない様に見えてないかな。

 事実だけど私のせいじゃないんだ。


「ごちそうさまでした……! 本当に美味しかったです……!」

「ごちそうさま。確かに良い料理だった」


 一番安い鶏肉の一枚焼きでもかなりの美味さ。

 厚切り肉はもっと美味しかったんだろうな。

 ルビナの満面の笑みだけで満足する事とする。


「ディアン様、ありがとうございます……!」

「満足したなら何よりだ」

「失礼いたします」


 食事の終わりを待っていたのだろう。身なりの良い中年男性が声をかけてきた。


「王国の騎士様でいらっしゃいますね? 町長のアンバと申します」

「お初にお目にかかります。ディアン・オブシと申します。王国騎士の末席を拝しております」


 町の担当でもない旅の騎士の元に、町長自らわざわざ足を運ぶ? ……嫌な予感がする。


「騎士様! どうか我が町をお救いください!」


 何で私の嫌な予感はこうもよく当たるんだ!

餌付け第二弾のこうかは ばつぐんだ!


読了ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ルミナの餌付け第二段ですね! タグにグルメとあるので、食べ歩き的要素もあるのでしょうか? なんにせよディアンとルミナの会話や掛け合いを 読んでると、癒やされます。 こういうほのぼの系コメデ…
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