第二十話 さらば小心騎士よ その六
控えの間に入り、席に腰掛けると、ルビナは当たり前のように横に座った。
給仕がお茶を二人分用意し、複雑な表情をちらりと見せて部屋を出て行った。
流石にルビナが竜だとは思われていないだろうけど、謁見の間での大騒ぎの後、何事も無かったかのように出てきた私達が奇妙に見られても仕方が無い。
「信じてもらえて良かったですねディアン様」
「そうだな」
しくじったあああぁぁぁ!
親書の内容を信じてもらえたのは良かった、良かったよ!?
私国王陛下を欺こうとした希代の詐欺師扱いだったからね!
でもあそこまで怯えさせちゃったら、王国でのルビナの立場は恐怖そのものになり、国交どころじゃなくなってしまう!
「あの、ディアン様」
「何だ」
「先程、公衆浴場など必要がある時以外では裸を他人に見せない、と言っていましたよね」
「あぁ」
「……あの、昨日ディアン様が気を失われた時に、汗を大変かかれていたので服を脱がせて身体を拭かせて頂いたのですが、その際に裸を見てしまった事、お許しいただけますでしょうか……」
うあああぁぁぁ! そう言えばそうだ!
気絶した私の服をルビナが全部着替えさせてくれたんだった! 何もかも見られたんだ!
竜であるルビナからすれば私の裸など何と言う事も無いだろうけど私は恥ずかしい!
咳払いをして、何とか気持ちを落ち着ける。
「手当のために服を脱がせたり身体を拭いたりする事は必要な行為として認められる。許す許さないではなく、私はルビナの手当てに感謝している」
「良かった……! ありがとうございます!」
恥を押し殺して人のために動く事を、師匠や竜皇様は素晴らしいと評価してくれたけど、これはどうなんですかね。
「まぁ今後は人に肌を見せたり、必要で無い時に見たりする事が無いようにな」
「分かりました。……あの、そうしますと一つ分からない事があるのですが」
「何だ」
「この姿を写しとった時の女性は、馬小屋で裸になって何をしていたのでしょうか?」
田舎の恋愛事情再びいいいぃぃぃ!
あれが恋人特有の行為だと知ったら、ルビナがどう言う行動に出るか……。
私が困る事はしないと言うが、現在私と恋人関係にあると言う認識がどう作用するか分からない!
何をどう説明すれば乗り切れるんだこれは!?
田舎の恋愛事情「小心騎士よ! 私は帰って来た!」
読了ありがとうございます。