表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
122/126

第二十話 さらば小心騎士よ その四

 怒りを抑えようと力を込めている肩に手を置く。


「竜の力を示す事を許可する」

「ディアン様!?」

「ただし、決して人を傷つけるなよ」

「……ありがとう、ございます!」


 言うなりルビナは襟元に手をかける。

 え、ちょっと待って何で服脱ぐの!?


「何をするルビナ」

「ディアン様から買って頂いた服を破る訳にはいきませんので」


 あ、竜の姿に戻るのか!

 確かにそれなら誰も傷つけずに竜である事を証明できる!

 でも仮の姿でもルビナの裸は晒す訳には!

 慌ててルビナの後ろに回り、外套を外して身体を隠す。


「ディアン様?」

「気にするな。準備が整ったら言うと良い」

「分かりました」

「何だ!? 裸踊りでもするつもりか!?」

「そんなもので許される訳が無いだろう! 一応見てやらんでもないがな!」

「何をしている騎士ディアン! 邪魔だ! 貴様はそこで平伏でもしていろ!」


 えぇい助平大臣共め!

 ルビナと竜族への暴言、後悔すると良い!


「ディアン様。整いました」

「あぁ。……!?」


 目を落とすと透き通るような白い肌、流れる艶やかな黒髪、鼻を撫でる甘い香り、背中から腰にかけて美しい曲線を描き

 っていかん! 何を考えているんだ私は!


「では頼む」

「はい! 『我が身よ、その姿を真の姿に戻せ』」


 光がルビナを包む。

 私は外套を手放し、離れ、れ?

 身体が! 持ち上がる!?


「ぎゃあああぁぁぁ!」

「りゅ、竜だあああぁぁぁ!」

「に、逃げろおおおぉぉぉ!」


 期せずして私はルビナの背にまたがり、慌てふためく大臣達を見下ろす位置になった。


「ご安心ください。彼女に危害を加える意思はありません」

「ひぎゃあああぁぁぁ!」

「助けてえええぇぇぇ!」

「嫌だあああぁぁぁ!」


「竜皇国の代表として節度ある振る舞いを心がけております」

「食われるうううぅぅぅ!」

「まだ死にたくないいいいぃぃぃ!」

「金なら幾らでもやるから私だけは助けてくれえええぇぇぇ!」


「あの」

「焼かれて死ぬのは嫌だあああぁぁぁ!」

「許してくださあああぁぁぁい!」

「わ、私は美味しくないいいぃぃぃ!」


 駄目だこりゃ。ほぼ全員が恐慌に陥っている。

 入口側にルビナがいるので、大臣達は逃げ出せもせず部屋の隅っこの取り合いをしている。

 衛兵は武器を構えてはいるものの、完全に腰が引けてる。あ、一人気絶した。

 国王陛下は玉座から動かないが、その表情からして腰が抜けているかもしれない。

 そして国王陛下の前にただ一人、立ちはだかる人影。


「陛下……! お下がりください……!」

「お、おぉラズリー……!」


 普段軽薄なラズリーが、ルビナの前に立ちはだかったのは少し意外だった。

 衛兵すら腰を抜かしたり気を失っている中、凄い度胸だ。私なら誰よりも早く逃げてる。


「ルビナ、もう十分だ」

「はい。『我が身よ、記憶の中の人の姿に変われ』」


 ルビナの詠唱と共に再び光に包まれ、身体が床へと近づく。


「!」


 光が収まると、ルビナの裸が!

 慌てて外套を拾い、再びルビナを隠す。

 まぁルビナの裸体を眺める余裕がある人なんてこの場には誰もいないけど。私も含めて。


「ディアン様、何故私を外套で隠すのですか?」

「人間は公衆浴場など必要がある時以外では、裸を他人に見せないものなのだ」

「そうだったのですね。では急いで服を着ます」


 怯える国の首脳達の前で、ルビナの身体を外套で隠す私。

 地獄のような空気は、ルビナが着替え終わってもしばらく残った。

恐怖、絶望、裸の女性、衆合地獄かな?


読了ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ