第十九話 旅の終わり その五
うっかりすると口から出そうな願望を飲み込みつつ、竜皇様に頭を下げる。
『親書を頂けただけで十分でございます』
『そうか。何か思い付いたらいつでも申すが良い』
『有り難いお言葉にございます』
親書を受け取る。昨日胸を刺した爪から。いや忘れよう。
あぁこれで国に帰れる。
『我が娘の事もよろしく頼むぞ』
え。
あ、その、大使の事、ですよね?
確認したいけど、それだけじゃないと言われたら断れるのか私!?
『はい。出来得る限りの力を尽くします』
無理なので確認しない事にする。
まぁ、竜皇国との外交は王国も喉から手が出る程欲しいだろうし、竜皇の娘となれば国賓に近い扱いになるだろうから、私が何もしなくても手厚く対応されると思うけど。
あ、そうだ。成竜の儀について聞いておかないと。
『あの、竜皇様。皇女様の成竜の儀の達成には、どのような事が必要なのでしょうか』
『……』
沈黙しないで竜皇様!
また何か失礼があったのならすぐ謝りますから指摘して!
『その、微力ではございますが、少しでも早く達成出来るよう、お力になれる事があればと思ったのですが』
『……そうか。ガネットだけでなく私を思っての事か。お心遣い感謝する』
違います早く終わらせた方がルビナにとっても私にとっても良いかなと思っただけです竜皇様の事もちょっと考えてはいたけど頭なんか下げないで!
『成竜の儀に明確な基準は無いのだ。試練を受けた者が自身の成長を報告し、それを長老かそれに近い竜が認めた時、その者は成竜となる。認められなければ再度国を出てやり直す事になっている』
『ご教授感謝いたします』
となるとこれはルビナの成長次第と言う事か。
うぅむ、ますます私への依存が問題になりそうだ。
水鳥亭でのように、色々な人との関わりを増やしていかないとなぁ。
しかし竜皇国の皇女と分かって対等に接してくれる人なんてそうそういるかな……?
『さて、話は終わったかね我が弟子。王国へと戻るとしよう』
『あ、はい』
いつの間にか師匠が私の後ろに立っていた。
私は出来るだけ早く王国に帰りたいけど、師匠は何を急いでいるんだろう?
お父様へのご挨拶はつつがなく済んだ模様。
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