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第十九話 旅の終わり その一

前回までのあらすじ。

竜皇の爪を胸に受け、死んだと思った小心者の騎士ディアン。しかしそれは竜皇が魔法で死後竜に転生するための儀式であった。竜の娘の怒りも思い過ごしと知り、安堵するのも束の間、名前を与えた事が結婚と同義と知る。二人を隔てるものは理性一つとなった小心騎士は、果たして耐え抜く事が出来るのだろうか。


それでは第十九話「旅の終わり」お楽しみください。

 外が明るくなってきている。

 鳥の声も聞こえてきている。

 朝だ。朝がやって来たのだ。


「はぁ……」


 さて、対策を整理しよう。

 まず王国と竜皇国の国交が生まれたのは大きな成果だ。

 それを利用してルビナの地位を確立するのは難しくない。


 それと新たな家の確保も頼んでおこう。

 国賓扱いだろうから無理は無いはずだ。

 寝室が二つあればとりあえず問題無い。


 後はルビナの成竜の儀だ。

 何をしたら成果と認められるのかは親書を受け取る時に確認しよう。


 残る問題は私とルビナの関係だが、出来るだけ距離を置いて感情を薄める事を主眼に、私より相応しい相手を探す事とする。


 よし、概ねこれで大丈夫だろう。

 半日の気絶して眠れない中、男の本能から目を逸らすために思考に没頭したお陰で、今後の対策が随分まとまった。


「すぅ……、すぅ……」


 思考への集中を切り上げると、ルビナの寝息が耳に入ってくる。

 穏やかな寝顔。

 これを守るために頑張ると決めた昨夜の決意を再確認する。


『騎士殿、お目覚めでしょうか』

『は、はい』

『失礼いたします』


 声と共に蒼い鱗の竜が入って来た。

 分かっていても、その巨体に一瞬声を上げそうになる。

 必死に飲み込んで寝台を降りると竜の前に立った。


『おはようございます。人間は朝起きた時に水で顔を洗うと聞いたのですが、お持ちしましょうか?』

『あ、はい、ありがとうございます』

『水よ、我が手に集え』


 竜がそう言うと、その大きな手一杯の水が現れた。

 え、これで顔を洗えと言うのか。


『どうかなさいましたか?』

『……いえ、ありがとうございます』


 大きな指の間から顔を入れて、その両側の指の外側から手を差し入れて顔を洗う。

 首と腕とが硬い鱗と擦れる。恐あああぁぁぁい!

 うっかりこの竜が手を握ったら、頭が絞った果実みたいになる!


『……終わりました。ありがとうございます』

『お役に立てましたら良かったです。水よ、宙空へ散れ』


 竜がそう言うと、手のひらの水が霧状になって消えた。

 ついでに顔も乾いた。魔法って凄い。

 魔法で作った水で顔を洗うとか贅沢どころの話じゃないな。


『お手数をおかけしました。ありがとうございます』

『とんでもない事です。私が受けた恩に比べたら、何ほどの事もありません。この度は騎士殿のお陰で竜皇国追放から救われました。感謝の言葉もありません』


 あ、尻尾を切られた竜か。

 それでわざわざ……、えっと、嫌な予感がするんだけど。

 ここにはルビナがいる。ルビナは皇女。そこに普通に入って来るって……?


『あの、もしかして……、皇子殿下でいらっしゃいますか……』

『はい。竜皇が第一子、アクァール・サン・ディライトと申します。この度は妹ともども大変お世話になりました』


 うっそおおおぉぉぉ!

 皇子様に顔洗いを手伝わせたの私いいいぃぃぃ!?

さぁなんて呼ぶ? 皇子様? お義兄様?


読了ありがとうございます。

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