第十八話 死を越えた先の幸い その五
「さて、わが弟子も目を覚ました事だし、私もそろそろ部屋に戻るとしよう。明日は王国に戻るからね。君達も準備しておくように」
そう言って立ち上がり扉へと向かう師匠。
あぁ有り難い。これで五体満足で国に帰……。
君、達?
「分かりました叔父様。よろしくお願いします」
「ちょっと待ってください師匠。ルビナも王国に連れて行くのですか」
「何を言っているのだね。先程ここで……、あ、我が弟子は寝ていたから、まだ知らなかったな」
……あああ史上最大級の嫌な予感が背中を駆け抜ける!
いやそんなはずはない!
あの子煩悩の竜皇様がそうそう娘を手放すはずがない!
「兄上は我が姪に、王国との親善大使の任を与えたよ。これからは君と共に竜皇国と王国を行き来して友好関係の構築に努める事になった」
「……そうでしたか」
良かった外れた!
責任取ってルビナを嫁にしろって言われるのかの思った!
ルビナの事は嫌いじゃないけど責任と親戚が重すぎる!
「ディアン様、よろしくお願いいたします」
「あぁ、よろしく頼む」
本当に良かった。これでルビナはいつでも竜皇国に帰れる立場になった。
その上竜皇様から認められて仕事を任されて、これを達成すれば本当の意味でルビナが救われる事になるだろう。
そうなればきっと私への依存も薄れていく。
少し寂しくもあるけど、これで私とルビナの旅は大団円だ。
「ちなみに王国では安全と円滑な業務のため、君の家に住まわせるようにね」
は?
「頼みましたよ我が弟子。では」
「待ってください師匠。では、じゃないですよ。私の家に住むとはどういう事ですか」
私の頭の中で大団円が音を立てて崩れ始める!
いやまだ間に合う! 扉から手を離して師匠!
「どういう事も何も、君は王国の親善大使、我が姪は竜皇国の親善大使。慣れない王国での生活の支援と、大使としての業務を円滑に行うなら、君の所に住むのが一番早いと思わないかね?」
思わない。
「私より師匠の元にいた方が良いと思いますが。師匠こそ王宮内に部屋を持っていますし、王族や貴族とのつながりも断然強い。私は一介の騎士ですし、竜のしきたりなどについて明るくありませんし、その、家なども質素ですし」
「残念だが兄上から、お前は出来る限り娘に関わるな、と釘を刺されていてね」
でしょうね。
「今失礼な事を考えなかったかい?」
「いえ何も」
「私への信頼の問題ではないのだよ我が弟子。これは我が姪の成竜の儀を兼ねているのでね」
「せいりゅうの、ぎ?」
初めて聞く言葉だ。
ルビナは何をさせらせるんだろう。
まだだ! まだ終わらんよ!
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