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第十八話 死を越えた先の幸い その一

前話までのあらすじ。

旅の経緯と記憶を魔法で引き出され、己の内面までも曝け出されてしまった小心者の騎士ディアン。竜の娘に幻滅されたと思いながらも、掟による罰から救うべく、竜皇の温情を盾にその地位を譲らせる。竜皇の地位を使って掟を変え、竜の娘と尾を切られた者達の名誉を回復し、竜皇の座を降りた少心騎士の胸に、竜皇の鋭い爪が突き立てられたのだった。


それでは第十八話「死を越えた先の幸い」お楽しみください。

 ……良い匂いがする。

 甘い、安らぐような胸を焦がすような匂い。

 何の匂いだろう。

 知っているような気がする。

 天国ってこんな匂いがするのかな?


 天国?


 あぁ、そう言えば私は竜皇に胸を刺されて死んだんだっけ。

 まさか私が天国に行けるとは思ってなかったなぁ。

 小悪党として浅い地獄で小突きまわされるんだと思っていたのに。


 天国に行けたって事はルビナは救えたのかな。

 それ位しか私がした善行って無いもんな。

 なら良かった。ルビナが幸せでありさえすれば。

 ってあれ? この匂いって……。


「うぅ……?」


 目を開けると石造りの天井が見えた。

 天国にしては殺風景だ。首を回すと寝台、壁、そして、


「ルビ、ナ……?」


 寝台に突っ伏して眠っているルビナが目に入った。

 やっぱりこの匂いはルビナのだ。でも何が起きたんだ?

 恐る恐る胸に手を当ててみるが、そこには傷一つない。

 あれ? でも完全に刺さってたよな? どういう事なんだ?

 いつの間にか服も変わっているし、もしかして夢でも見ていたのか?


「おや我が弟子。目が覚めたかな」

「師匠……」


 寝台の反対側に腰かけていた師匠が、読んでいた本を閉じた。


「半日寝ていてもう夜中だ。昨晩は夜更かしでもしていたのかね?」


 心当たりはあるけど、絶対原因それじゃない。


「あの、私竜皇様に胸を刺されましたよね……。てっきり死んだと思ったんですが……」

「あぁ、あれは君の心臓に竜の血を注いで魔法をかけたのだよ」

「魔法?」

「君の心臓が止まった時に、君の記憶と魂をそのままに肉体を竜に転生させる魔法を、ね」


 え!? 何それ! 竜の魔法ってそんな事も出来るの!?

 って言うか竜皇様、勝手に何してくれてんの!?


「事故でも病気でも、殺害でも老衰でも、身体が粉微塵になっても、毒で全身がただれ落ちても、灰一つ残さず焼き尽くされても、君の心臓が止まった瞬間に発動して転生する」


 師匠、たとえが怖すぎる。


「しかし君が恐怖で気絶した時は、早速発動するのかと思ってわくわくしたが、残念な事にそこまで君の心臓は弱くは無かったようだ」

「……人の生き死にで何楽しんでるんですか師匠」

「いや失敬。人に使う事などまずあり得ない魔法だったからつい。余程我が弟子の事を気に入ったのだろうね。人間嫌いの兄上があそこまでするとは、いやはや予想外だったよ」


 竜皇様の言っていた礼ってこういう事だったのか……。

 竜族からしたら人間を自分達と同じにする事が最高の礼なのかも知れない。

 ……正直説明してからやってほしかったけど。

なろうらしい設定が追加されました。(使うとは言ってない)。


読了ありがとうございます。

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