第十七話 小心者の戦い その四
震える身体を抑え、私は数秒で組み上げた策に従って言葉を続ける!
『次に人を対等な種族と認めた証として、人間の王国と対等な友好関係を結ぶものとします』
『……!』
『黙っておればぬけぬけと……!』
『覚えておれよ……!』
殺気で部屋が破裂しそう!
嫌だ嫌だ恐い怖いここに居たくない逃げたい早く終わらせたい!
『そして人間を対等であると認めた以上、捕まったり尾を切られたりした者達の罪も減刑されます。私が皇位に着いた恩赦を合わせ、彼らの罪を不問とします』
『何……? そんな事が……?』
『いやしかし確かに、下等な物に後れを取るのが罪であるから……』
『恩赦ともなれば、確かに……』
これさえ通れば後は何でもいい!
早く、早く終わらせる!
『これらの掟は私が死亡または退位した後も有効とします。何か異論はありませんか』
『……』
『異論がなければ承諾と見なします』
『……』
無限とも思える沈黙が流れる。
出ないでくれ! そのまま通してくれ!
『ではこの掟が定まったところで、私は皇位を先代竜皇に譲るものとします。以上です。ありがとうございました』
『何だと!』
『退位、されるのか!?』
『竜皇の地位を、そんな簡単に!?』
わぁ! どよどよ言い出した! 早く早くここを降りて逃げ出さないと!
『お待ちください竜皇様』
何で呼び止めるの! もう私は竜皇じゃありません! この玉座は貴方のものですよ!
『本当によろしいのですか? 未練はないのですか?』
こんな恐い玉座に今更未練も何も無いですよ! 皆様もそう望んでいらっしゃるでしょうし!
『ありません。皇女様方の名誉が戻ったのなら、私にはもうこれ以上望む事はありません』
『何と……!』
絶句する竜皇。何でも良いから早くこの玉座を降りさせて!
『承りました、ディアン様。竜皇の地位、再び受け取る事といたします』
ありがとうございます竜皇様!
後はよろしくお願いします!
『しかしそこまでの覚悟があったとは……。ではそれに見合う礼をしなければなるまいな……』
え、何? 竜皇様の爪が、私の胸の前に? み未練が無いって皇位の事じゃなくて!? れれれ礼ってそういう意味の!? かっかか覚悟はしてたつもりだけど、ここっこわ恐いいいぃぃぃ!
『血よ、彼の者の死後に新たなる幸いを』
私の腕より太い爪が、わ、私の、胸に、吸い 込 ま
最終回っぽいですがもうちょっとだけ続くんじゃ。
第十七話終了となります。
読了ありがとうございます。
次話から第十八話「死を越えた先の幸い」になります。
今後ともよろしくお願いいたします。