正義のヒーロー
「よぉ~し!テストも終わった事だし、目の前の敵をやっつけてパーティでもしよ!」
「何そんな浮かれてるの、学年最下位のくせにテストが終わった事に喜んじゃって…そもそもパーティなんて誰が開くのよ」
ちとせは蔓延の笑みで答える。
「もちろん七宮さんだよ!家も広いし、料理もできるし、親御さんいないから騒ぎ放題じゃん!」
強烈な右ストレートがちとせの顔面にクリティカルヒットし体を回転させながら吹っ飛ぶ。
「おい!?変身した状態で殴るなよ!一瞬頭が肩の後ろまで回ったぞ!?」
「浮かれてるから渇を入れたまで、そもそも彼女も変身してるから大丈夫よ」
「まぁ…そうだけど…変身してなかったときのことを考えると…ゾッとするからさぁ…」
「そんなこと考える暇あったら奴らをどう手早く倒せるかを考えてほしいものね。…行くわよ」
つかさはそう言うと飛び出して行った。あとに続くように夏音も飛び出す。ちとせは気絶したまま放置される。
「今回の敵は二体か…はじめてだ同時に出現するなんて…厄介だな!」
「まぁ、珍しいことだけど、今までなかったわけじゃないわ、同時に五体出現したこともあるみたい」
「五体!?そんなの骨が折れるってレベルじゃない!」
「そうかもね、あなたにとっては通常型さえも一苦労なんだから同時に二体や、五体なんてさばける対数じゃないわ」
「腹立つ言い方だけど…たしかにそうだ、私は弱いだから凛ちゃんと一緒に戦ってた」
「賢明な判断よ」
2人は二体のルーダーのもとに辿り着き戦闘を始める。
「あなたに手柄を立てさせてあげる。そっちの敵はまかせたわ」
「えっ…あぁ!」
2人はそれぞれの敵の弱点露出にとりかかる。
最初につかさが露出に成功する。
「ふぅ…少し時間かけすぎた…まぁいい、死ね」
弱点を一刀両断する。
「こっちは終わったわ、そっちはどう、早くして」
「わかってるって~の!」
夏音も弱点を露出させる。これで終わったと思いつかさは夏音に向いてた首を戻す。
「えっ…なんでコイツ消えてないの…?」
真っ二つにした弱点がみるみるうちに再生していく。それに気づき再度夏音に向き
「早くそいつを倒して!」
「あぁ?いきなりなんだよ!そんなことわかって…!キャァァッ!」
夏音は敵の手にはじき飛ばされる。つかさは驚くのも束の間夏音の敵に斬りかかる。しかし、復活したしもう一体にはばまれ吹き飛ばされる。
「あ…あいつら…なんなんだよ…」
「双子型…同時に倒さないといけない敵よ…見た目も強さも通常型と同じだけど…そこが違う」
「やっぱり厄介な敵じゃねぇか…傷の治癒にどれくらいかかる?」
「3分ってところ…」
「私も同じ…3分もあったら弱点なんて隠れちまう…」
2人は諦めて回復を待つ。そのうちに敵の弱点は隠れてしまった。
「最初からか…次は私にタイミングを合わせてくれ…今の私じゃ、あんたには追いつけない…」
「わかったは…」
2人は双子型に近づいていき、攻撃の体勢に入る。
「行くぞ!」
夏音の掛け声と共に敵を攻撃、弱点の露出にとりかかる。2人の剣が敵の心臓部を斬りつけ続ける。
「こっちはあともう少しよ!そっちは!?」
「ダメだ!護りの再生速度が上がってる!もう少し時間がかかる!」
「わかったわ、こっちももう少し耐えてみる」
つかさの敵はあと少しで弱点が露出するまでに到っているが、夏音の敵弱点の護りは一向に破れそうにない。
「クソ!クソ!クソ!クソ!なんで破れない!」
夏音は暴れるように剣を振るう。
「闇雲に振ってもダメよ!そんなんじゃ倒せない」
「そんなこと言われたって!どうすれば!」
「自分を信じるのよ」
「こんな状況で自分が強いなんて信じられるかよ!」
「力を信じるんじゃない!あなた自身を信じるの!信じなきゃ勝てない!」
「これが結果だ!信じても勝てない!」
「あなたは信じてない!自分を信じてない、あなたを信じる人を信じてない!」
夏音の剣が止まり、肩が落ちる。
「誰が私を信じてるんだよ…街のみんなか?世界中の人か?違う!誰もいない…私がここで命張って戦ってるなんて、地球を護ってるなんて誰も知らないんだから!」
「…いるわ…ここにいる…私はあなたを信じてる。信じてるからこそあなたに任せ戦った。あなたの提案にも乗った、信じてるからこそよ」
「あんたが…私を…信じてる」
「私だけじゃないわ」
夏音の後方から弾丸が跳んでくる。弾丸は心臓部へあたり、護りを吹き飛ばす。
「ほらね、まだいるでしょ?…弱点が露出したらとっとと攻撃、早くしないとまた露出する羽目になるわよ」
(私が間違ってたんだ…七宮…コイツは人を信じもしなければ頼りもしないやつだと思ってた…私だったんだな…信頼してなかったのは…)
「それはお互い様だろ!」
夏音は鋭い一撃を放つ。
「そうね…」
つかさも再生しかかった護りを剥がす。
「これで終わ…!」
敵の腕がつかさの足に絡みつき、腕を上下にしならせる。
「つかさ!」
夏音はトドメを刺そうと動き出そうとするが、斬った弱点がまた再生し始め、動くに動けない。
「チッ!再生してんじゃねぇ!」
弱点は細切れにしてもすぐ再生を始める。そして、つかさは振り下ろすタイミングで足を離され水面にたたきつけられる。
「つかさ大丈夫か!」
「…なん…とか…」
つかさは飛び上がり露出した弱点を斬る。しかし、今のたたきつけられたのでかなり体力を消耗したつかさの攻撃は当たることなくはじかれ、つかさごと脇差し刀も一緒にどこかへ飛んで行ってしまった。
「つかさぁぁぁぁ!はっ…」
つかさの飛ばされた先には人影があった。その人影はつかさを受け止めた。
「だ…誰…」
その人はつかさの質問に対し笑みを浮かべ答える。
「正義のヒーロー…と、言うところでしょうか?」
その人物はボーガンで敵の弱点を撃ち砕き、敵は跡形もなく消えていく。
「あのボーガン…!凛ちゃん!?」
「お疲れ様でした!よく頑張りましたね!なっちゃんもつかさちゃんも…」
…
つかさは目を覚ます。見たことのある天井、見たことのあるベッド、見たことのある部屋。
「あっ!七宮さん起きたんだね!」
リビングに降りると第一声はちとせだった。
「あぁ…うん…敵はどうなったの…」
「凛ちゃんが倒してくれたよ、感謝しといた方がいいんじゃない?仮を返せって言われるかもだしな!」
「あ、ありがとうございます…あのときは助けてもらって…」
「いいのよ、ヒーローはそう言う者だから!弱きを助け、悪を挫く、そしていつも遅れてやってくる者だから!」
「だからヒーロー…」
「で、早速なんだけど助けた仮を今返してくれないかな?」
その笑みには拒否は許さないと出ている。
「何をすれば…いいんですか?」
「私達2人をここに泊めてくれたらそれだけでいいよ?」
夏音が耳打ちをしてくる。
「断ったら殺されるからな…」
「そんなの言われなくても、顔を見ればわかるわよ…」
「で、どうするの?」
笑みの圧が凄い。
「わかりました…泊めます…」
「ありがとう、無茶を聞いてくれて」
「それじゃあパーティだね!これからパーティしよう!」
「はぁ…結局こうなるのか…」