表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/17

another side 02

「ばっか」


 男が私の両手を掴んで抑え込んだ。

 外見ひょろいくせに力はいっちょ前にあるんだね。それにしてもこれでも私、病人だよ?


「何やってるんだよ!」

「不審者に対する普通の対応だけど」

「ぐ………」


 すると瞬間病室の扉が勢いよく開いた。

 前橋さんだ。

 私のナースコール連打で慌てて来たんだ。


「楓ちゃん、どうしたの!?…………あ」


 すると前橋さんがこちらを見て赤面した。

 どうしてかな?

 どうしてかな?

 その純粋な乙女みたいな表情は何かな?


「す、すみません。楓がお騒がせを」


 この男は何を言っているんだろう。お騒がせなのはそっちの方だよ。


「あ~こっちこそごめんなさいね?見なかったことにしてあげるけど…………」


 そこまで言われてようやく私も今の状況を理解した。

 これは私が両手を抑えられてベッドに押し倒されている図だ。加えて私は抵抗しているつもりでも貧弱過ぎて受け入れているように見える。

 なるほど。要はそういうことをしようとしている状況に見えるわけだね。


「楓ちゃん体が弱いから」

「はい、良く知ってるので」

「まあっ」


 ますます前橋さんは赤面。

 仮にも病院の関係者だよね?容認したらダメだよね?


「ご、ごゆっくりー」


 そして前橋さんは両手で顔を覆って退出していった。

 さて、この男どうしてやろうかな。


「面倒なことを…………」

「こっちのセリフだよ」

「あ?」

「仮にも病人だよ?」

「はいはい。悪かったって」


 そう言って男はようやく私の両腕を離した。

 そしてベッド横にあったパイプ椅子に腰かけた。


「それで、さっきの気持ち悪い言葉は何なのかな」


 旦那。この人は馬鹿なんだね、きっと。


「気持ち悪い………まあ否定はしないが、そのままの意味だよ」

「つまり私とキミが結婚すると?」

「先の話だけど」

「私はこんな子供で根暗な人と結婚するの?」

「なんかその疑い方そっくりな気がするな」

「なに?」

「こっちの話だ…………見た目はそういう仕様だ」

「仕様…………」

「そうそう。タイムリープ系の暗黙の了解」

「知らないんだけど」

「ぷっ」


 何故か男が笑った。

 失礼だとは思わないのかな。

 ふう………まあ、今はそれよりも、


「私が信じると思う?」

「何を?」

「キミが未来から来た旦那だなんて」

「まあ、信じないだろうな。だから証拠を見せようと思う」

「証拠?」

「ああ。俺が未来から来たってことと、お前のことをどれだけ知った旦那かを」

「ふーん。だったらやってみて」

「ああ、言われなくても」


 そう言って男は立ち上がった。

 そして「まず」と言ってベッドの下を覗き込んで………ってえ?

 男が段ボールを取り出した。


「これ、お前がこっそり夜に食べてるお菓子な」

「な、何で…………」

「いや、病院食が薄口でお菓子が食べたいって病院の購買でわざわざ変装してまで買ったんだろう?まったく本当に病気を治す気があるのかよ」

「そ、それだけじゃ信じないよ」


 ふ、ふーん。確かにこのお菓子は私が購買でこっそりと買い集めたものだけど………そんなもの私のことをずっと見ていれば分かる事だよ。

 うん、私はまだ信じないからね。


「ほう?いいんだな?」

「な、何かな」


 男は不敵な笑みを浮かべる。


「俺は知ってるぞ?」

「だ、だから何をかな?」

「そうだな。例えばこのお菓子の入った段ボールの底にはお前がコツコツと毎日書き綴っている日記が………」

「っ」


 こ、コイツ………。


「何なら中身も照らし合わせてみるか?」

「な、中身まで知ってるの?」

「ああ」


 いい?未来の私。そういう恥ずかしいものは誰の目にも入らない場所に隠すんだよ?いいね?


「ったく、調子狂うな」

「え?」

「お前、何だか子供っぽいわ」

「…………」

「未来のお前はもっと大人っぽかったな」

「そうなの?」

「ああ」

「どんな感じなの?」

「ぷ」


 また男が笑った。


「な、何かな?」

「お前、散々疑っておいてもう信じてるだろ?俺のこと」

「あ…………」

「まあ、信じてくれるんだったらそれでいいが」


 そ、それは嫌でも信じる。何せ親すら言ってない秘密を知っているから。多分見たところまだ知ってそうだし。それにこの男、私のタイプじゃないわけじゃないからね。


「一ついいかな」


 だからそれを踏まえて私は尋ねる。


「名前は?」

「俺か?」

「キミ意外に誰がいるの?」

「まあ、そうだな」


 すると私と歳が同じくらいの男は、私を真っすぐに見据えて、


「俺は一斗。上技一斗だ」


 そう言った。


評価、感想お待ちしています!

モチベーションが上がります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ