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「それにしてもよくあんな嘘思いついたな」


 キッチンに立つ楓の背中を見ながら俺は言った。


「すぐに思いついたんじゃなくてあらかじめ考えておいたんだよ」

「それって俺が誰かを連れてくるってことを見越してか?」

「一斗くんは隠し事ができないから疑った誰かが来るんじゃないかと思って」

「…………」


 何もかもお見通しですか。


「だから服装もそれなんだな」

「そういうこと」


 楓が来ている服は最初に俺の部屋にいた時のものだ。何だか落ち着いた色のオシャレな服。


「にしても服ってそれしかないのか?」


 楓は寝間着には俺のシャツを着ていたし。


「そうだよ」

「不便じゃないか?」

「いざって時は一斗くんのシャツを借りるよ」

「いや、そう言う問題じゃなくてな」

「ん?」

「今度いつだれが家に来るか分からないだろ?」

「え?友達いたの?」

「お前な………」


 俺にだって友達ぐらいいる。現にさっき連れてきただろうが。


「あはは、冗談。でも確かにそうだね。毎日この服だけ洗濯するわけにもいかないしね」

「じゃあ買いに行けばいいだろ」

「へ?」

「いや、無いんだったら買いに行けばいいだろって」

「でもお金が」

「良かったな。ここに通帳がある」

「それ、一斗くんのだよね?」

「そうだな」


 俺はそれを楓に渡した。

 楓はタオルで手を拭いてから通帳の中を確認した。そして目を丸くしていた。


「いち、じゅう、ひゃく、せん、まん、じゅうまん、ひゃく………」


 楓が通帳と俺を交互に見て、


「自首する?」

「何もしてねえよ!」

「いや、でもこの金額は一介の高校生が持っていい金額じゃ………」

「それは同感だな」

「だったらどうしてこんな大金があるの?」

「中学の時にこっそりやってたバイトで稼いだのと………あとは叔母が残してくれたやつだ」


 まさか俺もこんな金額が貯まっていると思わなかったが。


「叔母さんが?」

「ああ、もう死ぬから好きに使いなさいって」


 まさか本当に死んじゃうとは思わなかったけど。


「だったら好きなことに使えばいいでしょ?友達と遊んだり」

「さっき友達がいることを疑ったよな?」

「でも………」

「まあ、気にするな。俺の好きなことに使うって言う使い道がコレだったってことでいいだろ」

「…………」

「そんなわけだから今週末行ってこい」

「え?来ないの?」

「え?俺も行くのか?」

「だって一斗くんのお金だよ?」

「別に気にしないけど」

「一斗くんが行かないなら行かないよ?」

「はあ?」

「どうする?」

「あーもう!分かったって。行けばいいんだろ」


 結局最後は楓に上手く言いくるめられたような気がする。

 その日の夕食は心なしか、俺の好きなものばかり並んだような気がする。


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