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08

 以前から告知されていたことだ。今日一日は各教科の確認テストという名の時間つぶしの日だった。入試で学力を測ったのだからべつに入学してすぐにテストをもう一度する必要は無いだろう、というのは一介の高校生である俺の意見だが、多分この日本に住まう高校生全員の総意でもあるだろう。

  しかも進学校でもない能力的に平均のこの高校が進学校の真似事をしても学生のヘイトを集めるだけなのである。

  そんなテストも終わった放課後。


「今帰り?」


 声をかけてきた女子。

  コイツのことも俺は知っている。


「………そうだな」


 成海美香。隼人と同じく中学からの腐れ縁。以上。べつにそれ以上の付き合いは無い。


「何であからさまに嫌な顔するのよ」

「いや、一日で二回も同じ説明をするのは流石に面倒だと思って」

「は?」

「何でもない、こっちの話だ。それで何の用だ?」

「暇なら一緒に帰らない?」

「悪いな、暇じゃない」

「暇でしょ」

「おい」


 人をあたかもボッチのように言うんじゃない。

 好んで一人でいるだけだ。


「早く準備しなさいよ」

「………はあ」


 二度手間だ。

 きっと成海はこの先こう聞いてくるだろう「何かあったの」と。あの隼人ですら俺が機嫌が悪いと分かったのだ。であるなら女子でなおかつ隼人と同じくらいの付き合いである成海が分からないわけが無い、というのは俺の考えすぎだろうか?

「何かあった?」


  おっと。予想通りだ。少し安心だ。

  これで何も無かったら俺は心配されると勘違いしていた痛い奴というレッテルを貼られるところだった。

  だがまあ、隼人に次いで説明するという二度手間なことには変わりはないわけで、詳しい詳細は割愛。


「というわけで一人暮らしをすることになった」


 下駄箱で靴を履き替えながら俺は説明した。一人暮らしをすることになった、と。当然だが楓のことは伏せている。


「嘘でしょ」


 隣で同じく靴を履き替えていた成海が言う。


「マジだ」

「自炊とかできるの?」


 またこのくだりか。


「人並みには」

「ふーん。アンタも苦労してるのね」

「それはもう」


 色々と苦労しているぞ。

  楓の存在だけでいっぱいいっぱいだ。


「よし決めた」


  嫌な予感はしていた。

  だが一応確認を取ることが礼儀と言うやつだ。言葉のキャッチボールである。


「何を?」

「手伝ってあげる」

  ふむ。やはりか。


「断る」

「何でよ!」

「仮にも俺は男だぞ?いいのか?男の家に一人でホイホイ上がり込んで」

「そっ、それは………」


  ふふ。答えづらいだろう?


「で、でも!アンタにそんな度胸なんてないでしょ!」

「………」


  ふむ。言い返せないな。確かに俺にそんな度胸はないな。もちろん欲というものはそんざいするが。


「だから手伝ってあげる、掃除とか。アンタにその気がないならべつに問題ないでしょっ」

「いや、いい」

「どうして?」

「それは………」


 暫く俺は黙り込む。

 成海がジト目を向けてきた。


「アンタ、何か隠してるでしょ」


 ほらこうなる。


「何も」

「手遅れよ」

「はあ…………」

「じゃあ今から行くわよ」

「まさか………」


 すると成海はニヤリと笑う。


「勿論アンタの家よ」

「いや、マジで勘弁してくれ………」

「何?やましいことでもあるの?」

「むしろやましいことしかないんだよ」

「そんなこと言われて私が帰ると思う?」

「ここで俺がやましいことはないって言っても帰らなかったと思う」


 つまりはどちらにせよ成海が家に来ることは避けられないというわけだ。


「往生際が悪いわよ」

「わかったよ………ただし」

「ただし?」

「誰にも言いふらすなよ?」

「ますます気になってくるわね」


  ふむ。釘さしたつもりがますます好奇心を掻き立てたというわけか。


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