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赤い髪のリリス  作者: LLX
47/53

47、フレアゴート

道が倍ほどに広がり、突き当たりにそびえる山壁が背丈の倍ほどに大きくえぐれている。

昔は人間が訪れていたのだろうか?

雑草の間に、磨き上げられた石を組み合わせた台と香炉が崩れ、転がっていた。


「ここか!みんな!着いたぞ!」


確かに道は広がったが、後ろは切り立った崖に違いはない。覗き込むとゾッとする。

そして前には、何と大きく壁がえぐられたそこに、地表の裂け目からシュンシュンと音を立てて蒸気が噴き出していた。

怖くて近づけない。


「マジかよ!これでどうやって会うんだ?」


吉井がそうっと蒸気の噴出口に近づく。

蒸気は岩の割れ目から出て、熱気がムッとする。ここにセイロでも置けば、いい具合に饅頭が出来るだろう。

いや、正統派は温泉卵か。


「痛むか?ゆっくり下りろ。」


「大丈夫ですよ、ザレル・・うっ!く・・」


リリスがザレルの手を借りて、何とか馬から滑るように降りてきた。

真っ白な顔に、ザレルが支えていないと膝がガクッと折れて倒れそうになる。

キアンも心配そうに手を貸し、蒸気の手前に並んで膝を付いた。


「大丈夫なの?本当に。」


「いいからお前達も座れ!火のドラゴンは人嫌いで有名なんだ。

無礼の無いように黙って座ってろよ。」


「うん。」


「皆様、驚いて後ろの崖に落ちません様に。

フレアゴート様は、火と共においでになりますが、決して危険はございません。」


「急ごうよ!また地震があるかもしれないよ!」


アイは地震、雷、大嫌いだ。


「わかってる!」


キアンが焦って見える。

今はリリスの為に、一刻も急ぎたいのだろう。


「リリス!あんたまた血が滲んでる!大丈夫?」


「ほんとに、お前マジ大丈夫かよ!」


彼は辛そうに俯いて、それでも微笑んでいる。

年齢以上の精神力だ。


「暗くなります、急ぎましょうキアン様。

フレアゴート様は、地中深くから炎と共に姿を現されますからご注意を。」


「分かった。」


キアンが懐からラーナブラッドを取り出す。

そして右手でそれを掲げ、蒸気に向かって大きな声で名乗りを上げた。


「誇り高く、尊き火のドラゴン、フレアゴートよ!

私はアトラーナ王のただ一人の王子、キアナルーサと申す者!

古から続く約定に乗っ取り、このたび十三の誕生を迎えた私は、このラーナブラッドにあなたの誓約をもらいに来ました!

どうかここにその姿を現し、石に誓いを立てたまえ!フレアゴートよ!」


ゴゴゴ・・シュウウウ・・・


蒸気が消え、一瞬シンと辺りが静かになった。


「あれ?」


ゴゴゴゴゴゴ・・・


また地響きが聞こえる。

と、思ったとき


ボオンッ!!グゴオオオオオ・・・!!


「ひゃあ!」


「きゃああ!!」


いきなり蒸気に代わって、そこからもの凄い勢いを持って火が噴きだした。


「わああああ!!」


恐怖に憑かれたメンバーが、思わずバタバタ後に下がり、馬もバラバラ逃げてゆく。

皆が崖から落ちぬように、残っていた白いミュー馬が壁になってくれた。


「大丈夫!落ち着いて!危険です!動かないでください!」


腰を抜かしてひっくり返ったキアンが、リリスの言葉にハッと我に返った。


「お、落ち着け!大丈夫だ!戻れ!」


確かに、炎が襲ってくる気配はない。


「お、おう!マジ、命が縮まっちったぜ。」


動く方が危険だとわかり、みんなそうっと元の場所まで戻り、火に向かって膝を付く。

やがて火は、燃えさかりながら動物の頭のような形を取った。


「お前、何者か?」


低く、重く地面が震動するような声が響く。

キアンの顔には、汗が流れた。

人嫌いで気難しいドラゴンだ、慎重に話す必要がある。


「私は、アトラーナ王の息子、キアナルーサです。次の王となるために・・」


「王だと?お前が王になると言うのか?」


キアンの心臓が不安に高鳴る。

フレアゴートは機嫌が悪そうだ。


「そうだ、フレアゴートよ。

私は、現王のただ一人の息子、正当な王位継承者だ。」


フレアゴートは、しかし無言で返事をしてくれない。

何か気に障ったのだろうかとキアンがビクビクして俯く。


「お久しゅうございます、フレアゴート様。

何かお気に障られましたでしょうか?」


リリスも考えているより聞いたが早いと思ったのだろう、キアンの代わりに聞いてくれた。


「久しいな、リリスよ。」


「はい。」


「リリス、お前がラーナブラッドを持つがよい。お前こそが正当な継承者である。」


火というのは見ていると惹きつけられる不思議な力を持っていますが、危険を感じるほどだと恐ろしい物になります。

キャンプ好きのネット友人はたき火をするためにキャンプをするのだと言っていました。

見ていて飽きないそうです。

うらやまです。

それではまた。


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