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赤い髪のリリス  作者: LLX
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4、いきなり剣と魔法のファンタジー

「あ!ちょ!ちょ!ちょとお!ヨーコ!」


「アイッ!美少年!待ちなさいよ!

待って!ほら!吉井、河原!何してんのよ!」


「お、おう。あ!カバン!」


「俺、まだ全部食べてねえよう!」


何が何やら一瞬の出来事で呆気にとられてしまった。

慌ててみんなでアイ達を追う。

しかし、昼時でショッピングセンターも人が多い。その人ゴミを、美少年はスルスルと滑るように避けてゆく。


「わっと!すいません!おっとお!ごめんよ!」


「きゃあ!ちょっと!走らないで!」


「すいません!すいません!」


後を追う三人は、人にぶつかりながらようやく追うのが精一杯で、なかなか二人に追いつかない。


「見失ったらアウトよ!もしかしたら誘拐かも!冗談じゃないわよう!」


「もしかじゃねえ!誘拐だっつうの!」


「警察呼ぶ?!」


「それより見失わないようにするのが先決だろ!警察はその後!」


だっと玄関を飛び出し、駐車場を駆け抜ける。

そして車の少ない駐車場の角まで来ると、いきなり美少年は立ち止まり、くるりと振り向き追ってくる三人の方へ空いている手を真っ直ぐに差し出した。


「風の翼よ!剣となれ!ガルド!」


ゴオオオオオオオッ!!


いきなり強い突風が竜巻となって三人を襲う!


「きゃああ!」「わあっ!」「げっ!」


「ぐおおおおおっ!!」


風を切る音と共に、ひときわ重厚感のある悲鳴が三人の背中から聞こえる。


「え?」


恐る恐る振り向くと、長い布包みを持った金髪の大男が、風にもまれて体中を切り裂かれている。


「ひええええっ!」


三人は、アワアワと二人の間から車の陰へ避難してへたり込んだ。

美少年はどうやらこの大男から逃げていたようだ。自分たちなどアウトオブ眼中、つまりどうでもいいらしい。


「うおおお!」


バンッ!男が気合いを入れて筋肉の塊のような手で風を薙払う。


「おのれ、こわっぱ!

手加減しておれば、いい気になりおって!」


「手加減などと、うぬぼれたお言葉!

異界人に危害を与えるは禁訓でございます!

何故もう一時待てませぬのか?!」


「何を言う!お前が巻き込んだのだ。」


大男は、手に持っていた長い布包みを解いて、中から何と大きな剣を取りだした。

剣を抜き、鞘を放ると正面に構える。


「禁を犯されますか?モルド様!

鞘を放るは、すでに負けをお認めか?!」


美少年もアイを後ろ手に庇うと、コートの中の剣に手をかける。

しかし美少年が剣を抜かないのを見ると、大男モルドはニヤリと笑った。


「異界人など、口をふさげば済む事。

禁だ禁訓だと主等のように甘い事を言っておると、下らぬ事で命を落とすぞ。

今、これからのようにな。石を、渡せ。」


ずいっとモルドが美少年ににじり寄る。

不利に思われる美少年は、しかし、にっこりと微笑んだ。


「道を外れるは容易い事。しかし、それではあまりにも人としてつまらぬと思いませぬか?」


「分かった風なことを!」


モルドがカッとして剣を振り上げた。


「きゃっ!」アイが小さく悲鳴を上げ、美少年にしがみつく。

ビュン!モルドは渾身の力を込め、大きなその剣を美少年に向けて振り下ろした。


「風の翼よ、楯となれ!ビルド!」


ブオウッ!


美少年の周りを風が取り巻き、男の剣が風に乗って遮られる。

少年の赤い髪は風にあおられ、まるで炎のように舞い上がった。


ビュンッ!ビュンッ!


「うおおおおお!!」


モルドがムキになって剣を操り、風を切る。

しかし、少年はほんの少しそれを避けるだけで、風が剣の動きを遮ってしまう。


「たとえ剣豪で知られるあなた様でも無駄でございましょう。

モルド様、あなたは私を甘いと申されました。

でも、私も命を賭けております。甘さは捨てねばなりません!お許しを!」


キラリと少年の瞳が冷たく輝き、優雅に片手をスラリと上げる。

その手を振り下ろそうとした刹那、アイがいきなり抱きついてきた。


「駄目え!駄目よ!殺しちゃ駄目!」


「アイッ!」


思わずヨーコが立ち上がる。

美少年がハッと揺らいだとき、隙を逃さずモルドが斬りつけてきた。


「あっ!」


「死ねっ!」


アイと美少年にモルドの剣先が唸りをあげて迫る。

死ぬうっ!アイはギュッと目を閉じた。


ガキィーン!


「な、なに?」


鼓膜が破れそうな甲高い音に目を上げると、寸前で剣が止まっている。

いつの間に現れたのか、黒髪の大男がやはり大きな剣でその剣を横から受けていたのだ。

ボサボサの黒髪、浅黒い肌に無精髭を生やし、目つきが鋭い。

瞳は茶色いが、東洋人より彫りが深く、結構ハンサムな外人に見える。

30才位に見えるが身体もがっしりと、筋肉が隆々としてまるでプロレスラーのようだ。

しかし、彼のファッションはどうも現代にそぐわない。まるで中世の映画の中から飛び出してきたような、黒いシャツとズボンの上に見事な装飾を施した甲冑をつけているのだ。胸当てにはまるで家紋のように、獅子が吠えている。

腰には長短の剣を二本携え、背には左肩から斜めに大きな革袋を背負っていた。


「おのれ、ザレル!邪魔をするか!」


ギリギリギリと、モルドが押される。

ザレルは表情一つ変えず静かに美少年を振り返ると、軽く会釈した。


「任せよ。彼の方が待っている。」


「わかりました。」


彼の方って誰?ここはどこー?

へなへな体中から力が抜けて、アイの頭が真っ白になる。


「さ、しばしお付き合い下さい。」


にっこり微笑む美少年は、天上に光り輝く天使なのか?嫌なことから回避するように、アイはうっとり手を合わせた。


「はい、どこまでも。」


ああー、なんか幸せー!駆け落ちみたい!

再び美少年がアイの手を取り走り出す。


「ひいーん!待ってよう!あんた達、ほら!」


ヨーコも、あんぐり口を開けて座っている男共の手を掴み、馬車馬のような気分で懸命に引いて走り出した。

現代に、ファンタジーの世界のキャラが現れても、意外とコスプレ?で終わりそうな日本人の順応力w


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