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赤い髪のリリス  作者: LLX
32/53

32、フィーネの調べ

 一つの音楽が終わり、皆が手を叩く。

キアンに旅の様子を聞いていたラグンベルクが、突然リリスを呼びつけた。


「リリスよ、お前はフィーネの名手と聞くが、聞いてみたいものだ。ここでひいて見せよ。」


「あれは・・公にお聞かせするほどの物ではありません、どうかお許しを。」


「良い、お前が奏でるのを見たいのだ。」


「・・・・承知、いたしました。」


仕方なくリリスが楽師からフィーネを受け取り、床に座ってポロンとつま弾く。


「わ!リリスがひくんだって!すっごい!」


アイ達も話を止めて注目する。

フィーネとは、ハープの一種だが形は細長く、1m程の高さでCを崩したような流線型をし、中に十二本の弦が張ってある優雅な楽器だ。

天分の才があったのだろう、リリスは小さい頃、師にほんの少し習っただけでその技を自分の物にしてしまった。

以前何度か、ザレルの実家で彼の年老いた両親を前に演奏して喜んで貰ったのだが、おかげで人に知られるようになってしまった。


 音の加減を1本1本確認し、一息息を吐いて整える。

ザワザワと話し声のする中、静かにリリスが奏で始めた。


ポロロ・・ボロロンポロロ・・ポロン・・・


それは、師が好んで弾いていた曲。

白く細いリリスの指が、弦に踊る。


皆、天の使いが舞い降りたかと思った。

優雅なリリスの姿に、聞く者を虜にするフィーネの音色。

何という軽やかで清々しい音の羅列。


それは川のせせらぎの中、暖かい風がフワリと頬をかすめ、木々が優しくサヤサヤと囁き、小鳥達のさえずりが遠くに聞こえてくる。

そんな錯覚を覚えさせる。

思わず人々は話を止め、リリスの手が生み出す風のようなフィーネの音楽に聴き入った。


ザレルが周囲を見渡す。

誰しもが、リリスを軽蔑していた者さえ、目を閉じじっと聞き入っているではないか。

この、人を引きつける力・・全てに秀で、そして美しいその姿。


色さえまともなら・・

余程・・リリスの方が・・・・


フフフ、何をバカな。彼は魔導師なのだぞ。


ザレルは珍しく笑いながら腰の剣に手を触れ、心地よい音楽に思いを馳せながら、初めてリリスに会った時を思い浮かべていた。






 宴の後、リリス達はキアンとは別にそれぞれ階下の部屋に別れた。

大きな屋敷の中は、客室も階級で別れている。

召使いや騎士用の二人部屋にそれぞれヨーコとアイ、吉井と河原、ザレルとリリスと、それぞれ以外と質素な部屋だが、村の宿より数倍上等、野宿よりはるかにいい。


「きゃあーん!ベッド久しぶりいっ!」


「あー!もう一度リリス様の演奏が聴きたい!」


「天国よねー!」


アイ達の歓声がシンとした屋敷に響き渡る。

ベッドはしっかりして、布団もフワフワいい香り。みんな部屋に入るとまず、ベッドに飛び込んでくつろいだ。


 リリスは部屋に戻るなり、すぐに出ようとする。ザレルがさっとその手を掴んだ。


「お放し下さい。王子のご様子を・・」


「大丈夫だ、休め。お前、疲れているだろう。」


リリスの顔は緊張の連続で白く青ざめている。食事もほとんど喉を通らなかった。


「でも・・」


「あいつは許婚と一緒だ。気を利かせろ。」


美しいフェルリーンとは、久しぶりの再会らしい。キアンも嬉しそうだった。


「ああ、本当に美しい方でした。あんなに綺麗な方がいらっしゃるのですね。」


「羨ましいか?お前にも良い人は出来る。」


その言葉に、リリスが花のように笑った。


「うふふ!私なんかより、ザレルが先です!ザレルは御師様がお好きなのでしょう?」


ザレルがきょとんとリリスを見る。

その間の抜けた顔に、また声を上げて笑った。


「やっぱり!」


「あれは人間じゃない。お前が一番知っているだろう。いいから子供は早く寝ろ!」


「はい、ではほんの少し。フィーネを弾いた後に御館様に頂いたお褒めの酒で、少し酔ったようです。」


「子供に酒はまだ早いのだ、飲ませる方が悪い。腕は、落ちてなかったな。」


「ああ、フィーネですか?うふふ、何度も間違えたけど、誤魔化すのが上手でしょう?」


「誤魔化すのも腕の内か?呆れたな。」


「はい、どうぞ呆れてくださいませ。」


リリスはようやく気が楽になって頷き、コートのボタンをはずし始めた。


フィーネとはハープですね。

似合うから、それでいいのですw


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