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赤い髪のリリス  作者: LLX
23/53

23、聖域でキャンプ

 「キャーッ!アハハハハ!!」


谷に笑い声が響き渡り、川に向かう男達をアイ達が歓声を上げて応援?している。


「キャハハハ!!グズねえ!ほーら逃げた!」


「うるせえ!静かにしろよ!おめーらが・・ああっ!くそう!」」


みんな努めて明るく振る舞い、キアンもようやくショックが薄れたようだ。

日が沈む前に木で銛もどきを作り、ザレルが川で魚を捕るのを見てみんなやってみるけど、なかなかうまく行かない。


「吉井!へったくそ!ザレルさっすがー!」


声援を送る女性陣の横では、リリスがたき火をおこしている。

川に入って魚を捕る吉井やザレルと違って、川岸には懸命に手を伸ばしてキアンが、無様な格好で魚を狙っていた。


「キアン!お前も水に入って取れよ!」


「馬鹿者!濡れると寒いではないか!

リリス!お前も取らぬか!」


「私は火の番でございます。どうぞ、がんばって下さいませ。」


ぬぬぬぬ・・まったく面白くない!

リリスはリリスで軽々と羽が生えたような身のこなしで崖を昇り、食べられる草や木の実を取ったり薪を都合してくる。

男で全然使えないのはキアンだけなのだ。

やたら何だか悔しい!


「リリスは魔導師だから何でも出来て当然だ!ザレルは戦士だから魚くらい捕れて当たり前だ!

僕は王子だぞ!」


キアンはまだ一匹も魚が捕れない。


「キアン、お前黙ってないと魚逃げちまうぞ!」


「うー!僕は王子だ!食べるのが専門なのだ!」


地団駄踏んで、キアンが悔しがる。


「キアン、かっこ悪ーい!」


「格好などどうでも良い!僕はお腹が空いた!」


ポイッと銛を放り、思い切って川に入るとザブンと手を水に突っ込む。


「あっ!」

「あっ!」


そうっと上げたキアンに手には、ピチピチ跳ねる魚が一匹。


「と、取れた・・・!取れたああ!!」


「わあっ!キアン様!おめでとうございます!」

リリスが思わず立ち上がって手を叩く。


「やった!やった!やっ・・ああっ!」


喜び勇んで飛び上がって喜ぶキアンだが、その時ツルンと魚は逃げてしまった。


「あーあ、逃げちゃった。」

「やっぱりカッコ悪!!」


逃げた魚は大きい。これで女性陣の人気も、とうとう地に落ちたキアンだった。


 日が落ちた岸辺で、煌々と燃え上がる火を囲み、そのほとんどをザレルが捕った魚をリリスが手際よく焼いてゆく。

パチパチと、はぜる木を絶妙に組み合わせて火をおこすリリスはやはり旅慣れている。


「へえ、生木って燃えない物って聞いたけど、燃えるのねえ。」


「ええ、工夫すると燃えるんです。

場所次第では乾いた木は手に入りませんから。」


リリスが一番に焼けた魚を持ち、キアンに聞いた。


「女性の方からよろしいでしょうか?キアン様。」


「え?あ、ああ、んーむ。いいぞ。」


「ありがとうございます。ではヨーコ様どうぞ。」


リリスが差し出す魚を、ヨーコが受け取る。

さすがにこの国でもレディファーストらしい。


「お先!」


パクッとかぶりつくヨーコを横からジトッと見ながら、王子もさすがに文句が言えない様子だ。


「おいしーい!あとは、お風呂に入れれば最高なのに!」


「ほんと、また温泉に入りたいわねえ。」


アイとヨーコがぼやく。

リリスがアイに魚を差し出して、慰めるように微笑んだ。


「旅に出ると、なかなか風呂は入れません。

私が旅から帰りますと、御師様も私だと分からないくらい凄く汚れているんです。

食事もままならない物で、ガリガリに痩せてしまって、いつも凄く叱られるんですよ。」


「ああ、だからそんなに体が小さいんだ!

駄目だよ、成長期は程々食わないとさ。

キアンは食い過ぎみたいだけど。」


「なにっ!吉井!僕のどこが食い過ぎだっ!」


と言いながら、お腹がつっかえて身体が曲がらない。


「ね、温泉有るんだから入ればいいのに。」


「本当ですね、今度からなるべくそうしましょう。村の方を説得するのが大変ですが。」


「ああ、そうかあ!嫌われ者は大変だね!」


「まったくです。」


あははは・・笑い声が谷間にこだまする。

ザレルが捕った魚も、焼いただけなのに凄く美味しい。これが本当の自然なんだなあと、しみじみ感じる。


「お母さん、心配してるかなあ・・」

アイが呟いた。


「そうねえ、偽物だってばれてないかなあ。」

「ばれても、どうしようもねえだろ?」

「そうだよねぇ・・」


くすん、アイの目に涙が浮かぶ。


「うざったい両親も、離れてみればやけに寂しいね。ヨーコも兄弟心配でしょ?」


「ん、でも、こんな経験滅多にないもん。

こんな旅行、少し憧れてたから、紛れるよ。」


ヨーコが優しくアイの背を撫でた。


「アイ様、グァシュラム様の土人形でしたらご心配いりません。本当に良くできておりますから。」


「リリス、わかって無いなあ!バレるって!」


「えっ、そうなんですか?」

リリスは不思議そうだ。


「ん、親子ってさ、何か違うってわかるんよ。

同じカッコしてても、何か違うってね。

リリスの御師様だってきっとそうだよ。」


「でも、御師様は・・」


御師様は・・本当の親じゃない・・

リリスが俯いて考える。


「わかるよ、リリスの御師様にも。

リリスの事が。」


吉井がきっぱり言い放つ。


「どうして分かると思うんだ?こいつは本当の親子じゃない、他人だぞ!」


またキアンがいい雰囲気をぶち壊してくれた。

まったくこいつは!


「鈍感ね!あんたにわかるもんですか!」

「何?!僕のどこが鈍感だ!無礼者!」


吉井がハアッと大きな溜息をつく。


「もういいから、キアンは黙ってろよ。

でもよ、俺達はみんな一緒で紛れるけど、河原は一人で・・あいつどうしてるかなあ。」


「うん・・・」


ヨーコがぼうっと空を仰ぐ。アイが慌ててヨーコの背を叩いた。


「だーいじょうぶって!あいつ頭いいじゃん、きっと上手く切り抜けるよ。」


「うん・・・きっとそうだね。」

「そうそう!そうだよ、なっキアン。」


吉井まで慌てる。


「ふん、叔父上は簡単に人に危害を与えるようなお人ではない。きっと丁重に保護されている!・・・はずだ。」


うっ!何だか当てに出来ない返事!

苦しそうに、アイが話題を変えた。

親ならわかるはず!と言うのは願いです。

誰しも親に高望みします。

でも、親も親でそう思ってますけど、母親が髪切っても気がつかないことは多々あります。

わからなくてもお相子でw

それではまた

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