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赤い髪のリリス  作者: LLX
16/53

16、覗き魔退散

「リリス!リリス!」


キアンが恐怖で声を上げる。


”まあ、何てお声、キアナルーサ王子。

ホホホ・・おやまあ、良いところで見つけた。

リリス、お前も美しい少年におなりだねぇ。白い肌に赤い髪がよう映える。

ホホホ・・良い目の保養じゃ。”


ザザザザザーンッ!!


浴槽の湯が下から滝のように立ち上り、その表面にグレタガーラの姿が映った。

水鏡で見ているのだろう、黒い扇で口元を覆っているが、目はほくそ笑んでいやらしい。

リリスはしかし、慌てる風でもなく湯に浸かったままで、またグレタに微笑みかけた。


「お久しぶりでございます、グレタガーラ様。

お元気で何よりでございます。」


”まあ、小憎らしい、少しは慌てて見せよ。

その湯、凍り付かせて見せようか?”


「それは困りました。しかし、淑女のあなた様がどうぞ場所をわきまえて下さいませ。」


リリスがヒュッと片手でグレタに向かって風を切った。


パーーンッ!”ヒイッ!”


グレタの身体が両断されて、立ち上がる水が霧になって散って行く。


サアアア・・・


あとにはまた、あっけなく湯の流れ出る音のみが響き渡り、元の静粛が戻った。


「リリス?どうなったのだ?」


「まことに、湯殿を覗くなど、淑女のなさることではありません。

今の方は、ラグンベルク公にお付きの魔導師、水のグレタガーラ様でございます。

さあ、そろそろ上がりましょうか。」


「え?心配いらないのか?殺したのか?」


「はい、ご心配いりません。さあ、上がりましょう。夜遅く、リリスに付き合っていただいてありがとうございます。さあ、」


「うん。あ、自分で拭くぞ。自分の事はやる。」


「はい、そうして頂くとリリスは助かります。」


促されてキアンは恐る恐る浴槽を出ると、壁に掛けてあるタオルを取った。

並んで体を拭いているリリスは、別に変わった様子もなく平然としている。


心配いらないんだ。リリスといれば・・


「ようし!さっぱりしたからよく眠れるぞ!」


「はい、明日は山越えでございます。よく眠って、明日に備えて下さいませね。」


「うん。明日は絶対泣き言は言わないよ。」


「ふふっ!はい、承知しました。」


キアンはリリスの優しい笑顔に励まされて、明日もがんばろうと湯気の合間に見える星空を仰いだ。

 一方、追い払われたグレタガーラは・・


「おのれえーー!あのガキ!ヘーックション!」


頭からカメの水を被り、濡れネズミの姿で彼女は、唇をぎりぎりと噛みしめてカメの底に残った水を覗き込んだ。

しかし、これでは水鏡は使えない。

腹立たしげにカメを一蹴りして、水を吸ったドレスの重みに足を取られドスンと転ぶ。


「痛い!神経痛が・・えーい!痛い!キィー!

腕の一振りで術を跳ね返しおった!

おのれ、もう子供とは侮るまい!見ておれよ!」


リリスの穏やかな微笑みが、その内にある力を覆い隠して油断してしまう。

グレタガーラは、一瞬で追い払われた屈辱に爪を噛みながら、復讐に瞳を燃え上がらせた。


風呂は覗いてはいけません。

グレタガーラも偵察の間が悪い。

それではまた。

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